伊豆的舞女日文原版伊豆の踊り子.docx

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伊豆的舞女日文原版伊豆の踊り子

第六章

伊豆の踊子

いず伊豆のおどりこ踊子

道がつづら折りになって、いよいよあまぎとうげ天城峠に近づいたと思う頃、あまあし雨脚がすぎ杉のみつりん密林を白くそ染めながら、すさ凄まじい早さでふもと麓から私を追って来た。

私はにじゅうさい二十歳、高等学校のせいぼう制帽をかぶり、こんがすり紺飛白の着物にはかま袴をはき、旧天城トンネル

学生カバンを肩にかけていた。

一人伊豆のたび旅に出てから四日目のことだった。

しゅぜんじ修善寺温泉にひとよ と一夜泊まり、ゆ湯がヶしま島温泉にふたよ と二夜泊まり、そしてほおば朴歯のたかげた高下駄で天城を登って来たのだった。

重なり合った山々やげんせいりん原生林や深いけいこく渓谷の秋にみと見惚れながらも、私は一つの期待に胸をときめかして道を急いでいるのだった。

そのうちにおおつぶ大粒の雨が私を打ち始めた。

お折れまが曲った急なさかみち坂道をか駈け登った。

ようやく峠の北口のちゃみせ茶屋にたど辿りついてほっとすると同時に、私はその入口で立ちすくんでしまった。

余りに期待がみごとにてきちゅう的中したからである。

そこでたびげいにん旅芸人のいっこう一行が休んでいたのだ。

つ突った立っている私を見た踊子が直ぐに自分のざぶとん座蒲団をはず外して、うらがえ裏返しにそば傍へ置いた。

「ええ……」とだけ言って、私はその上に腰をおろ下した。

坂道を走ったいきぎ息切れと驚きとで、「ありがとう」という言葉がのど咽にひっかかって出なかったのだ。

踊子とまぢか真近に向い合ったので、私はあわててたもと袂から煙草を取り出した。

踊子がまたつ連れの女の前のたばこぼん煙草盆を引き寄せて私に近くしてくれた。

やっぱり私は黙っていた。

踊子は十七くらいに見えた。

私には分らないこふう古風の不思議な形に大きく髪をゆ結っていた。

それがたまごがた卵形のりり凛々しい顔を非常に小さく見せながらも、美しく調和していた。

髪を豊かに誇張して描いた、はいし稗史的な娘のえすがた絵姿のような感じだった。

踊子の連れは四十代の女が一人、若い女が二人、ほかに長岡温泉のやどや宿屋のしるしばんてん印半纏を着た二十五六の男がいた。

湯ヶ島湯本館の

――「梯子段」にて

私はそれまでにこの踊子たちを二度見ているのだった。

最初は私が湯ヶ島へ来る途中、修善寺へ行く彼女たちとゆかわばし湯川橋の近くで出会った。

その時は若い女が三人だったが、踊子はたいこ太鼓をさ提げていた。

私はふ振りかえ返り振り返りなが眺めて、りょじょう旅情が自分の身についたと思った。

それから、湯ヶ島の二日目の夜、宿屋へなが流して来た。

踊子が玄関のいたじき板敷で踊るのを、私ははしごだん梯子段のちゅうと中途に腰を下していっしん一心に見ていた。

——あの日が修善寺で今夜が湯ヶ島なら、明日は天城を南に越えてゆ湯がヶの野温泉へ行くのだろう。

天城しち七り里の山道できっと追いつけるだろう。

そう空想して道を急いで来たのだったが、あまやど雨宿りのちゃみせ茶屋でぴったりお落ちあ合ったものだから私はどぎまぎしてしまったのだ。

間もなく、茶店の婆さんが私を別の部屋へ案内してくれた。

平常用はないらしくとしょうじ戸障子がなかった。

下をのぞ覗くと美しい谷が目の届かない程深かった。

私は肌にあわつぶ粟粒をこしら拵え、かちかちと歯をな鳴らしてみぶる身顫いした。

茶を入れに来た婆さんに、寒いと言うと、

「おや、だんなさま旦那様お濡れになってるじゃございませんか。

こちらで暫くおあたりなさいまし、さあ、おめしもの召物をお乾かしなさいまし」と、手を取るようにして、自分たちのいま居間へ誘ってくれた。

その部屋はろ炉が切ってあって、障子をあけると強いかき火気が流れて来た。

私はしきい敷居ぎわ際に立ってちゅうちょ躊躇した。

すいしにん水死人のように全身あお蒼ぶくれの爺さんがろばた炉端にあぐらをかいているのだ。

ひとみ瞳まで黄色くくさ腐ったようなめ眼をものう物憂げに私の方へ向けた。

身の周りに古手紙や紙袋の山をきず築いて、そのかみくず紙屑のなかにうず埋もれていると言ってもよかった。

到底いきもの生物と思えない山のかいき怪奇を眺めたまま、私はぼうだ棒立ちになっていた。

「こんなお恥ずかしい姿をお見せいたしまして……。

でも、うちのじじいでございますから御心配なさいますな。

お見苦しくても、動けないのでございますから、このままでかんにん堪忍してやって下さいまし」

そうことわ断ってから、婆さんが話したところによると爺さんはながねんちゅうふう長年中風をわずら患って、全身がふずい不随になってしまっているのだそうだ。

紙の山は、しょこく諸国から中風のようじょう養生を教えて来た手紙や、諸国から取り寄せた中風の薬の袋なのである。

爺さんは峠を越える旅人から聞いたり、新聞の広告を見たりすると、その一つをもも洩らさずに、全国から中風の療法を聞き、ばいやく売薬を求めたのだそうだ。

そして、それらの手紙や紙袋を一つも捨てずに身の周りに置いて眺めながら暮らして来たのだそうだ。

長年の間にそれがふる古ぼけたほご反古の山を築いたのだそうだ。

私は婆さんに答える言葉もなく、いろり囲炉裏の上にうつむいていた。

山を越える自動車が家をゆ揺すぶった。

秋でもこんなに寒い、そして間もなく雪にそ染まる峠を、なぜこの爺さんはお下りないのだろうと考えていた。

私の着物からゆげ湯気が立って、頭が痛む程火が強かった。

婆さんは店に出て旅芸人の女と話していた。

「そうかねえ。

この前連れていた子がもうこんなになつたのかい。

いいあんこ娘になって、お前さんも結構だよ。

こんなに綺麗になったのかねえ。

女の子は早いもんだよ」

こ小一時間経つと、旅芸人たちがいでた出立つらしいものおと物音が聞こえて来た。

私も落着いている場合ではないのだが、むなさわ胸騒ぎするばかりで立ち上がる勇気が出なかった。

たびな旅馴れたと言っても女の足だから、十ちょう町や二十町おく後れたってひとはし一走りに追いつけると思いながら、炉の傍でいらいらしていた。

しかし踊子たちが傍にいなくなると、かえ却って私の空想はと解きはな放たれたように生き生きと踊り始めた。

彼等を送り出して来た婆さんに聞いた。

「あの芸人は今夜どこで泊まるんでしょう」

「あんな者、どこで泊まるやら分かるものでございますか、旦那様。

お客があればあり次第、どこにだって泊まるんでございますよ。

今夜の宿のあてなんぞございますものか」

はなは甚だしいけいべつ軽蔑を含んだ婆さんの言葉が、それならば、踊子を今夜は私の部屋に泊まらせるのだ、と思った程私をあお煽りた立てた。

あまあし雨脚が細くなって、みね峰が明るんで来た。

もう十分も待てば綺麗に晴れ上ると、しきりに引き止められたけれども、じっと坐っていられなかった。

「お爺さん、お大事になさいよ。

寒くなりますからね」と私は心から言って立ち上がった。

爺さんは黄色い眼を重そうに動かしてかす微かにうなずいた。

「旦那さま、旦那さま」とさけ叫びながら婆さんがお追っかけて来た。

「こんなにいただ戴いてはもったい勿体のうございます。

申訳ございません」

そして私のカバンを抱きかかえて渡そうとせずに、幾らこと断わってもそのへん辺まで送ると言ってしょうち承知しなかった。

一町ばかりもちょこちょこついて来て、同じことをく繰りかえ返していた。

「勿体のうごさいます。

おそまつ粗末いたしました。

お顔をよく覚えて居ります。

今度お通りの時にお礼をいたします。

この次もきっとお立ち寄り下さいまし。

お忘れはいたしません」

私は五十銭ぎんか銀貨を一枚置いただけだったので、痛く驚いて涙がこぼれそうに感じているのだったが、踊子に早く追いつきたいものだから、婆さんのよろよろしたあしど足取りが迷惑でもあった。

とうとう峠のトンネルまで来てしまった。

「どうも有難う。

お爺さんが一人だから帰って上げて下さい」と私が言うと、婆さんはやっとのことでカバンを離した。

暗いトンネルに入ると、冷たいしずく雫がぽたぽた落ちていた。

南伊豆への出口がぜんぽう前方に小さく明るんでいた。

トンネルの出口から白塗りのさく柵に片側をぬ縫われた峠道がいなずま稲妻のように流れていた。

この模型のような展望のすそ裾の方に芸人達の姿が見えた。

六町と行かないうちに私は彼等の一行に追いついた。

しかし急にほちょう歩調をゆる緩めることもできないので、私は冷淡な風に女達を追い越してしまった。

十けん間程先きに一人歩いていた男が私を見ると立ち止った。

「お足が早いですね。

――いいあんばい塩梅に晴れました」

私はほっとして男を並んで歩き始めた。

男は次ぎ次ぎにいろんなことを私に聞いた。

二人が話し出したのを見て、うしろから女たちがばたばた走り寄って来た。

男は大きいやなぎごうり柳行李を背負っていた。

しじゅうおんな四十女は小犬をだ抱いていた。

上の娘が風呂敷包、中の娘が柳行李、それぞれ大きい荷物を持っていた。

踊子は太鼓とそのわく枠を負うていた。

四十女もぽつぽつ私に話しかけた。

「高等学校の学生さんよ」と、上の娘が踊子にささや囁いた。

私が振り返ると笑いながら言った。

「そうでしょう。

それくらいのことは知っています。

島へ学生さんが来ますもの」

いっこう一行はおおしま大島のはぶ波浮の港の人たちだった。

春に島を出てから旅を続けているのだが、寒くなるし、冬の用意はして来ないので、しもだ下田に十日ほどいて伊東温泉から島へ帰るのだと言った。

大島と聞くと私はいっそう一層詩を感じて、また踊子の美しい髪を眺めた。

大島のことをいろいろ尋ねた。

「学生さんがたくさん泳ぎに来るね」と、踊子が連れの女に言った。

「夏でしょう」と、私がふり向くと、踊子はどぎまぎして、

「冬でも…」と、こごえ小声で答えたように思われた。

「冬でも?

踊子はやはり連れの女を見て笑った。

「冬でも泳げるんですか」と、私はもう一度言うと、踊子は赤くなって、非常にまじめな顔をしながら軽くうなずいた。

「ばかだ。

この子は」と、四十女が笑った。

天城峠より湯ヶ野へ向かう旧街道

ゆ湯がヶの野まではかわづ河津川の渓谷にそ沿うて三里余りのくだ下りだった。

峠を越えてからは、山や空の色までが南国らしく感じられた。

私と男とは絶えず話し続けて、すっかり親しくなった。

おぎのり荻乗やなしもと梨本なぞの小さいむらざと村里を過ぎて、湯ヶ野のわらやね藁屋根が麓に見えるようになったころ、私は下田までいっしょに旅をしたいと思い切って言った。

彼は大変喜んだ。

湯ヶ野のきちんやど木賃宿の前で四十女が、ではお別れ、という顔をした時に、彼は言ってくれた。

「このかた方はお連れになりたいとおっしゃるんだよ」

「それは、それは。

たび旅はみちづ道連れ、よ世はなさけ情。

私たちのようなつまらない者でも、ご退屈しのぎにはなりますよ。

まあ上がってお休みなさいまし」とむぞうさ無造作に答えた。

娘たちはいちどき一時に私を見たが、しごく至極なんでもないという顔で黙って、少し恥ずかしそうに私を眺めていた。

皆といっしょに宿屋の二階へ上がって荷物を降ろした。

畳やふすま襖も古びてきたなかった。

踊子が下から茶を運んで来た。

私の前にすわると、まっか真紅になりながら手をぶるぶるふる顫わせるので茶碗がちゃたく茶托から落ちかかり、落とすまいと畳に置くひょうし拍子に茶をこぼしてしまった。

あまりにひどいはにかみようなので、私はあっけにとられた。

「まあ!

いやらしい。

この子はいろけ色気づいたんだよ。

あれあれ…」と、四十女があき呆れは果てたというふうに眉をひそめててぬぐい手拭を投げた。

踊子はそれを拾って、きゅうくつ窮屈そうに畳をふ拭いた。

この意外な言葉で、私はふと自分をかえり省みた。

峠の婆さんにあお煽り立てられた空想がぽきんと折れるのを感じた。

そのうちに突然四十女が、

「書生さんのこんがすり紺飛白はほんとにいいねえ」と言って、しげしげ私を眺めた。

「このかた方のかすり飛白は民次と同じ柄だね。

ね、そうだね。

同じ柄じゃないかね」

そばの女に幾度も駄目を押してから私に言った。

「国に学校行きの子供を残してあるんですが、その子を今思い出しましてね。

その子の飛白と同じなんですもの。

この節は紺飛白もお高くてほんとに困ってしまう」

「どこの学校です」

「じんじょう尋常五年なんです」

「へえ、尋常五年とはどうも……」

「こうふ甲府の学校へ行ってるんでございますよ。

長く大島におりますけれど、国はかい甲斐の甲府でごさいましてね」

一時間ほど休んでから、男が私を別の温泉宿へ案内してくれた。

それまでは私も芸人たちと同じ木賃宿に泊まることとばかり思っていたのだった。

私たちは街道からいし石ころみち路や石段を一町ばかりおりて、おがわ小川のほとりにあるきょうどうゆ共同湯の横の橋を渡った。

橋の向こうは温泉宿の庭だった。

そこのうちゆ内湯につかっていると、あとから男がはいって来た。

自分が二十四になることや、女房が二度ともりゅうざん流産とそうざん早産とで子供を死なせたことなぞを話した。

彼は長岡温泉のしるしばんてん印半纏を着ているので、長岡の人間だと私は思っていたのだった。

またかおつき顔付も話振りも相当知識的なところから、ものず物好きか芸人の娘にほ惚れたかで、荷物を持ってやりながらついて来ているのだと想像していた。

湯から上がると私はすぐにひるめし昼飯を食べた。

湯ヶ島を朝の八時に出たのだったが、その時はまだ三時前だった。

男が帰りがけに、庭から私を見上げてあいさつをした。

「これで柿でもおあがりなさい。

二階から失礼」と言って、私は金包みを投げた。

男は断って行き過ぎようとしたが、庭に紙包みが落ちたままなので、引き返してそれを拾うと、

「こんなことをなさっちゃいけません」とほう抛り上げた。

それがわら藁屋根の上に落ちた。

私がもう一度投げると、男は持って帰った。

ゆうタぐ暮れからひどい雨になった。

山々の姿が遠近を失って白く染まり、前の小川が見る見る黄色くにご濁って音を高めた。

こんな雨では踊子たちが流して来ることもあるまいと思いながら、私はじっとすわっていられないので二度も三度も湯にはいってみたりしていた。

部屋は薄暗かった。

隣室との間のふすま襖をしかく四角く切り抜いたところにかもい鴨居から電灯が下がっていて、一つの明かりがにしつけんよう二室兼用になっているのだった。

ととんとんとん、激しい雨の音の遠くに太鼓の響きがかす微かに生まれた。

私はか掻きやぶ破るようにあまど雨戸をあけて体を乗り出した。

太鼓の音が近づいてくるようだ。

あめかぜ雨風が私の頭をたたいた。

私は眼を閉じて耳を澄ましながら、太鼓がどこをどう歩いてここへ来るかを知ろうとした。

まもなくしゃみせん三味線の音が聞こえた。

女の長いさけ叫びごえ声が聞こえた。

にぎやかな笑い声が聞こえた。

そして芸人たちは木賃宿と向かい合った料理屋のおざしき座敷に呼ばれているのだとわかった。

二三人の女の声と三四人の男の声とが聞き分けられた。

そこがすめばこちらへ流して来るのだろうと待っていた。

しかしそのしゅえん酒宴はようき陽気を越えてばかさわ馬鹿騒ぎになって行くらしい。

女のかなきり金切ごえ声が時々いなずま稲妻のようにやみよ闇夜に鋭く通った。

私は神経をとが尖らせて、いつまでも戸をあけたままじっとすわっていた。

太鼓の音が聞こえる度に胸がほうと明るんだ。

「ああ、踊子はまだ宴席にすわっていたのだ。

すわって太鼓を打っているのだ」

太鼓がやむとたまらなかった。

雨の音の底に私はしず沈みこ込んでしまった。

やがて、皆が追っかけっこをしているのか、踊り回っているのか、乱れた足音がしばらく続いた。

そして、ぴたと静まり返ってしまった。

私は目をひか光らせた。

この静けさが何であるかをやみを通して見ようとした。

踊子の今夜がけが汚れるのであろうかと悩ましかった。

雨戸を閉じてとこ床にはいっても胸が苦しかった。

また湯にはいった。

湯をあらあら荒々しくか掻きまわ回した。

雨が上がって、月が出た。

雨に洗われた秋の夜がさ冴えざ冴えと明るんだ。

はだし跣でゆどの湯殿を抜け出して行ったって、どうともできないのだと思った。

二時を過ぎていた。

あく翌る朝の九時過ぎに、もう男が私の宿に訪ねて来た。

起きたばかりの私は彼を誘って湯に行った。

美しく晴れ渡った南伊豆の

こはるびより小春日和で、みず水かさのま増した小川が湯殿の下に暖かく日を受けていた。

自分にも昨夜の悩ましさが夢のように感じられるのだったが、私は男に言ってみた。

「昨夜はだいぶ遅くまでにぎやかでしたね」

「なあに。

聞こえましたか」

「聞こえましたとも」

「この土地の人なんですよ。

土地の人は馬鹿騒ぎをするばかりで、どうもおもしろくありません」

彼が余りに何げない風なので、私は黙ってしまった。

「向こうのお湯にあいつらが来ています。

——ほれ、こちらを見つけたと見えて笑っていやがる」

彼にゆび指さされて、私は川向こうの共同湯のほうを見た。

ゆげ湯気の中に七八人のらたい裸体がぼんやり浮かんでいた。

ほのぐら仄暗い湯殿の奥から、突然はだか裸の女が走り出して来たかと思うと、だついじょう脱衣場のとっぱな突鼻に川岸へ飛びおりそうなかっこう格好で立ち、両手を一ぱいに伸ばして何か叫んでいる。

手拭もないまっぱだか真裸だ。

それが踊子だった。

わかぎり若桐のように足のよく伸びた白いはだかみ裸身を眺めて、私は心にしみず清水を感じ、ほうっと深い息を吐いてから、ことこと笑った。

子供なんだ。

私たちを見つけた喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、つまさ爪先きで背いっぱいに伸び上がるほどに子供なんだ。

私はほが朗らかな喜びでことこと笑い続けた。

頭がぬぐ拭われたように澄んで来た。

微笑がいつまでもとまらなかった。

踊子の髪が豊か過ぎるので、十七八に見えていたのだ。

その上むすめざか娘盛りのようによそお装わせてあるので、私はとんでもない思い違いをしていたのだ。

男といっしょに私の部屋に帰っていると、まもなく上の娘が宿の庭へ来てきくばたけ菊畑を見ていた。

踊子が橋を半分ほど渡っていた。

四十女が共同湯を出て二人のほうを見た。

踊子はきゅっと肩をつぼめながら、しかられるから帰ります、というふうに笑って見せて急ぎ足に引き返した。

四十女が橋まで来て声を掛けた。

「お遊びにいらっしゃいまし」

「お遊びにいらっしゃいまし」

上の娘も同じことを言って、女たちは帰って行った。

男はとうとう夕方まですわり込んでいた。

夜、かみるい紙類をおろ卸して回るぎょうしょうにん行商人と碁を打っていると、宿の庭に突然太鼓の音が聞こえた。

私は立ち上がろうとした。

「流しが来ました」

「ううん、つまらない。

あんなもの。

さ、さ、あなたの手ですよ。

私ここへ打ちました」と、ごばん碁盤をつ突つきながら紙屋は勝負に夢中だった。

私はそわそわしているうちに芸人たちはもう帰り道らしく、男が庭から、「今晩は」と声を掛けた。

私は廊下に出ててまね手招きした。

芸人たちは庭でちょっと一寸ささや囁き合ってから玄関へ回った。

男の後ろから娘が三人順々に、

「今晩は」と、廊下に手をついて芸者のようにお辞儀をした。

碁盤の上では急に私のまけいろ負色が見え出した。

「これじゃしかたがありません。

投げですよ」

「そんなことがあるもんですか。

私のほうが悪いでしょう。

どっちにしても細かいです」

紙屋は芸人のほうを見向きもせずに、碁盤のもく目を一つ一つ数えてから、ますます注意深く打って行った。

女達は太鼓や三味線を部屋の隅に片付けると、将棋盤の上でごもくなら五目並べを始めた。

そのうちに私は勝っていた碁を負けてしまったのだが、紙屋は、

「いかがですもういっせき一石、もう一石願いましょう」と、しつっこくせがんだ。

しかし私が意味もなく笑っているばかりなので紙屋はあきらめて立ち上がった。

娘たちが碁盤の近くへ出て来た。

「今夜はまだこれからどこかへ回るんですか」

「回るんですが」と、男は娘たちのほうを見た。

「どうしよう。

今夜はもうよ止しにして遊ばせていただくか」

「うれしいね。

うれしいね」

「しかられやしませんか」

「なあに、それに歩いたってどうせお客がないんです」

そして五目並べなぞをしながら、十二時過ぎまで遊んで行った。

踊子が帰ったあとは、とても眠れそうもなく頭がさえざえしているので、私は廊下に出て呼んでみた。

「紙屋さん、紙屋さん」

「よう…」と、六十近い爺さんが部屋から飛び出し、いさ勇みた立って言った。

「今晩は徹夜ですぞ。

打ちあか明すんですぞ」

私もまた非常にこうせんてき好戦的な気持ちだった。

その次の朝八時が湯ケ野しゅったつ出立の約束だった。

私は共同湯の横で買ったとりうちぼう鳥打帽をかぶり、高等学校の制帽をカバンの奥に押し込んでしまって、街道沿いの木賃宿へ行った。

二階のとしょうじ戸障子がすっかり明け放たれているので、なんの気なしに上がって行くと、芸人たちはまだとこ床の中にいるのだった。

私はめんくら面喰って廊下につ突った立っていた。

私の足もとのねどこ寝床で、踊子がまっかになりながら両のたなごころ掌ではたと顔をおさ押えてしまった。

彼女は中の娘と一つの床に寝ていた。

昨夜の濃い化粧が残っていた。

くちびる唇とまなじり眦のべに紅が少しにじんでいた。

このじょうちょ情緒的な寝姿が私の胸をそ染めた。

彼女はまぶ眩しそうにくるりとねがえ寝返りして、掌で顔を隠したまま蒲団をすべ辷り出ると、廊下にすわり、

「昨晩はありがとうございました」と、綺麗なお辞儀をして、立ったままの私をまごつかせた。

男は上の娘と同じ床に寝ていた。

それを見るまで私は、二人が夫婦であることをちっとも知らなかったのだった。

「大変すみませんのですよ。

今日立つつもりでしたけれど、今晩お座敷がありそうでございますから、私たちは一日延ばしてみることにいたしました。

どうしても今日お立ちになるなら、またしもだ下田でお目にかかりますわ。

私たちは甲州屋という宿屋にきめておりますから、すぐおわかりになります」と四十女が寝床から半ば起き上がって言った。

私はつ突っぱな放されたように感じた。

「明日にしていただけませんか。

おふくろが一日延ばすって承知しないもんですからね。

道連れのあるほうがよろしいですよ。

明日いっしょに参りましょう」と男が言うと、四十女もつ附けくわ加えた。

「そうなさいましよ。

せっかく折角お連れになっていただいて、こんなわがまま我儘を申しちゃすみませんけれど。

明日はやり槍が降っても立ちます。

あさって明後日が旅で死んだあか赤んぼう坊のしじゅうくにち四十九日でございましてね、四十九日には心ばかりのことを、下田でしてやりたいと前々から思って、その日までに下田へ行けるように旅を急いだのでございますよ。

そんなことを申しちゃ失礼ですけれど、不思議なご縁ですもの、明後日はちょっとおが拝んでやって下さいましな」

そこで私はしゅったつ出立を延ばすことにしてかいか階下へ降りた。

皆が起きて来るのを待ちながら、きたないちょうば帳場で宿の者と話していると、男が散歩に誘った。

街道を少し南へ行くときれいな橋があった。

橋のらんかん欄干によりかかって、彼はまたみのうえばなし身上話を始めた。

東京であるしんぱ新派役者のむれ群にしばらく加わっていたとのことだった。

今でも時々大島の港で芝居をするのだそうだ。

彼らの荷物の風呂敷からかたな刀のさや鞘が足のようには食み出していたのだったが、お座敷でも芝居のまねをして見せるのだと言った。

やなぎごうり柳行李の中はそのいしょう衣裳やなべちゃわん鍋茶碗なぞのせたいどうぐ世帯道具なのである。

「私は身を誤った果てに落ちぶれてしまいましたが、兄が甲府で立派に家のあとめ後目を立てていてくれます。

だから私はまあ要らない体なんです」

「私はあなたが長岡温泉の人だとばかり思っていましたよ」

「そうでしたか。

あの上の娘が女房ですよ。

あなたより一つ下、十九でしてね、旅の空で二

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