MRBRAIN 文剧本.docx
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MRBRAIN文剧本
第6回
『変人脳科学者VS悲劇の多重人格トリック!
!
脳トレは嘘発見器!
?
』
都議会議員・松下百合子(大沢逸美)が、残酷なやり口で銃殺される
事件が起こった。
丹原朋実(香川照之)と林田虎之助(水嶋ヒロ)は、松下を殺害し
後に犯人が現場で食べたお弁当から指紋とDNAを検出。
そこから浮上した容疑者は、15年前に起こった誘拐事件の被害者・
秋吉かなこ(仲間由紀恵)だった!
そして松下は、かなこが誘拐された当時の学校の担任だったことが
判明する。
科警研
かなこが多重人格なのか!
?
「大変なことになるかもしれない!
!
」声を荒げる九十九(木村拓哉)。
「秋吉かなこさんが多重人格だった場合、
まったく違った複数の人格が入れ替わり立ち替わり
彼女の身体を支配するんです。
と同時に、その行動は非論理的になってしまう。
」
「行動予測が不可能ってことですか!
?
」と和音。
「そうじゃなくてそれを踏まえておかないと僕達が振り回されて
しまうってことですよ。
その間にも第二、第三の犠牲者が出る・・。
」
島根で同一犯の手によると思われる第2の殺人が起こる。
犯行には銃は、松下百合子殺害に使われたものと同じ拳銃と
断定される。
そして現場からは今回もかなこのDNAと指紋が検出された。
科警研では、行動科学研究室の浪越克己(井坂俊哉)が調査のリーダーに
任命され、プロファイリング捜査が試みられる。
殺されたのは青山幸一。
津上組系暴力団の構成員。
かなこはこの青山の実家の倉庫に監禁されていたのだ!
拳銃はかなこが青山の自宅から盗んだと思われる。
そして、倉庫にはこんな書き込みが残されていた。
『かなこへ
俺がお前を助けてやる
俺は奴らを絶対に許さない
俊介』
かなこには共犯がいたのか!
?
九十九、林田、浪越と和音は、島根へ向かうことに。
「行けば、きっとわかりますよ!
秋吉くみこさんが、これからどこに向かおうとしているのか!
」
張り切って特急列車に仱贽zむ九十九たち。
ところが、その電車からかなこ本人が降りてきたことに
九十九らは気付かず・・。
コンビニに立ち寄ったかなこは、店に貼られた自分のポスターに
驚く。
『容疑者発見にご協力下さい!
秋吉かなこ
松下由里子議員殺害事件』
カバンに財布を戻したかなこは、自分のカバンの中に
新聞紙で包まれた銃を見つけ・・唖然とする。
かなこはそれをコンビニのゴミ箱に捨てて立ち去り・・。
島根県 雲南市
俊介の実家の倉庫・地下室を調べる九十九たち。
中に明かりはなく、真っ暗。
「こんなに暗かったんですね・・。
どうやって暮らしてたんだろう。
」と和音。
「テレビが明かり代わりだったのかもしれまえsんね。
リモコンは?
」と九十九。
「それにしても・・こんなところに、15年間も・・。
・・足に何かが!
ゴキブリ!
!
」
九十九はベッドの上に解かれたロープと血痕があることに気付く。
「どんな扱い受けてたんでしょうね・・。
」
九十九、林田、浪越は、和音に気付かれないように地下室を抜け出し、
和音を閉じ込めてしまう。
「九十九さん!
!
」慌てる和音。
「本当にいいんですか!
?
」と林田。
「彼女は、今彼女にしか出来ない仕事をやっているんです。
」
「リンダ!
リンダ!
!
九十九さん!
!
」
「秋吉かなこはここを出て、一体まず何を見たんですかね。
」
外に出た3人は、青い空を見上げ・・。
東京
コンビニのゴミ箱から、かなこの携帯と銃が発見される。
「もう、殺す気はないってことですかね?
」
「何を考えてるんだ・・あいつは!
」と丹原。
CDショップ
かなこは楽しそうにCDを視聴していて・・。
島根
昼食を食べる3人。
「浪越さん、刑事だったんですか!
?
」と林田。
「ええ。
プロファイリングを担当してたんです。
」
「え・・じゃあ、何で科警研に?
」
「ある・・事件があって。
」
浪越は過去にプロファインリングを大きく外したことがあり、
それ以来現場を指揮するのが怖くなってしまったという。
「科警研ならそんなこともないかと思って、
それで来たんです。
」と浪越。
「良かったじゃないですか、浪越さん!
これからはあなたの意見なんて誰も求めませんよ。
仕事を放り出すような人間は、誰も当てにしませんからね。
」
「ちょっと九十九さん、そんな言い方!
」と林田。
「・・・」
「あれ?
何でそんな顔するんですか?
これからは、あなたがどれだけぶっ飛んだプロファイリングをしようと、
自由なんですよ!
」
「自由・・・」
「なんでも勝手に、やっちゃっていいんです!
誰も聞いてませんから!
」
「・・・そうですよね!
」
食事を終えた3人は、倉庫へ戻り、和音を解放。
和音は凶暴化し、地下室から這い出てくる。
「またやりやがったな!
」
「いや・・ただ実験なんですけど・・」と九十九。
和音はバッドを振りかざし・・!
!
田んぼのあぜ道を逃げる3人、追う和音!
!
4人は再び倉庫へ。
「そんなに怖かったんですか!
?
」と九十九。
「何なら閉じ込めてあげましょうか!
?
」
「でも15年ですよ、15年!
15年間も閉じ込められたらどうなります?
」
「僕なら・・確実におかしくなりますね。
」と浪越。
九十九たちは木箱に書かれたメッセージを見つける。
『かなこへ
俺がお前を助けてやる
俺は奴らを絶対に許さない』
「・・・やはり、俊介はかなこさん自身ですよ!
」と浪越。
「え!
?
」
「かなこさんは、解離性同一性人格障害、つまり多重人格だったんです!
」
「・・・」
「多重人格のほとんどは、幼い時、繰り返し虐待を受けることだと
思われます!
耐えられない虐待にあった時、
今、こんな目に遭っているのは自分じゃない!
別の誰かなんだ!
という人格を生み出すんです。
自分を守るためのある種の防衛反応です。
そうやっていくつかの人格が生まれ、だけど、それぞれの人格は
それぞれ独り歩きを始めます!
それぞれが勝手な事をするようになり、それが制御出来なくなる!
・・・殺人を犯したのは、俊介という人格でしょう!
二つの事件を考え合わせると・・・
少なくても他に、あと二つの人格がいると思われます。
」と浪越。
「じゃあ、とりあえず、多重人格だとして・・
その、次に俊介が狙うのって・・誰なんですか?
」と林田。
「次!
?
」
「次。
」
「え・・
テレビです!
!
」
「テレビ?
」
「秋吉かなこは、ずっとここに閉じ込められていたんです。
15年、誰かの情報を集める術は他にはありません!
なぜ松下百合子だったのか・・
動機そのものはこれだけでは推測できませんが、
松下百合子は公人です。
行動が把握しやすいのは確かです!
」と浪越。
「じゃあ・・次に狙うのは・・」と林田。
「事件の関係者で・・テレビに出ていて、
その居所が比較的簡単に特定出来る人物じゃないでしょうか!
?
」
「リンダ君。
」と九十九。
「はい!
」
「報告した方がいいんじゃないんですか?
」
「あ、はい!
」
「そういうことなので、至急テレビ番組のチェックをお願いします。
」
林田は電話で丹波にそう告げる。
「・・うーん。
」
「どうかしたんですか?
」
「凶器が捨てられてた。
秋吉かなこにはもう殺人の意志が無いんじゃないかって
話にもなっててな。
」
「恐らくその拳銃を捨てたのは、俊介ではない別の人格です。
それに拳銃が一丁って誰が決めたんですか?
」と九十九。
「・・・」
不気味な笑みを浮かべて街を歩くかなこ。
ジージャンにジーンズ、ポケットには銃。
手には、同窓会のハガキを握り締め・・。
同窓会会場
無言で壇上に上がるかなこ。
「あなた、どなたでしたっけ?
組と名前言ってもらっていいですか?
」と幹事。
「皆さん、今日はお招きいただき、本当にありがとうございます。
不思議なのは、指名手配にまでなっているのに、
俺の顔を誰もわからないということです。
きっと楽しい事が多すぎて、俺の事なんか思い出しても、
すぐに忘れちまうでしょうね。
」
「かなこ・・・」
かなこに怯え後ずさりする同級生たち。
「何で逃げるんだよ!
」
かなこはそう言い、同級生に銃を向ける。
「待ってるって言ってたのに。
」
一人の女性目掛けて発砲。
そして、次々と同級生に向けて発砲していき・・。
会場に駆けつけた丹原らが、テーブルの下に隠れたかなこを発見する。
「助けて・・助けて・・下さい・・。
」
かなこはそう呟くと、気を失ってしまう。
科警研
「秋吉かなこは精神鑑定の結果、
解離性同一性人格障害、多重人格と判断されました。
現れる人格は全部で3つです。
まずは俊介という人格。
」と丹原。
「殺したのは俺だ。
俺がやんなきゃかなこはいつまでもあそこに閉じ込められた
ままだったからな。
」
「この俊介は今回の3件の殺人全てを認めています。
彼は非常に支配的な性格で、3人の全ての記憶を受け継いでいるそうです。
松下さんと、同級生を襲った動機については、」
「かなこはあいつらが無視したせいで誘拐されたんだ。
かなこはあの日、あの担任に言ったんだ。
門の所に変なヤツがいるって。
だけどあの女はこう言った。
かなこちゃん、前もそんなこと言って何もいなかったじゃない。
怖かったら友達と帰りなさいって。
テレビの前ではそんなこと一言も話さず、
かなこを返せって泣いて訴えやがって。
しかも、人の不幸をエサに議員にまでなりやがって!
」
「友達は?
」と刑事。
「あいつはかなこが自分のことをかわいいと思いすぎだって、
そういうの自意識過剰っていうんだって、笑ったんだ。
だからかなこは一人で帰るしかなかった。
」
そして、かなこは拉致されてしまった。
「かなこにしてみりゃ、青山もあいつらも同じなんだよ!
」
「次は、ショウコという人格。
このショウコは、享楽的で、さばけた人格です。
」と丹原。
「聞いて。
青山の相手は大体私がしてたの。
アハハハ。
あ、私お腹空いちゃった!
」
「殺害現場で弁当を食べたり、ステーキハウスに出入りしてたのは
この人格です。
そして最後が、かなこという、彼女本来の人格。
主人格というそうですが。
」と丹原。
「気が付いたら・・人が死んでて・・
よく見たら・・松下先生だった。
」
「このかなこは、気の弱いおどおどとした性格です。
死体に取りすがって泣いたり、毛布を掛けたりしてやったのは
彼女です。
」
モニターを見つめていた九十九と難波が何かに気付く。
「彼女はぼんやりと他の人格がいることを認識していますが、
他の二人にあるような、連絡はありません。
彼女には、俊介やショウコの記憶が全く無いそうです。
」
「本来の人格が他の人格の行動を知らないんですか?
」
「そういうことになります。
」
「それこそが、解離性同一性人格障害の、特徴なんです。
他人格にネガティブな、経験や感情を、体験させてしまうことで、
自分の身を守るんです。
」と浪越。
「今回、こちらのご協力もあって、何とか逮捕することが出来ました。
ありがとうございました。
以上です!
」と丹原。
「あ!
あの!
!
」と九十九。
「何ですか?
」
「いや・・あの・・」
「はい。
」
「何でもありません。
」
一人考え込む九十九。
「何や。
まだ何か引っかかってんのか?
」難波が声を掛ける。
「秋吉かなこさんのこれからは・・天国か、地獄ですよね。
多重人格か・・そうじゃないかで・・。
」
「・・・」
「九十九さん!
!
」林田が駆けつける。
「秋吉かなこの精神鑑定の結果なんですが、どう思われましたか?
」
林田が九十九に聞く。
「報告を聞く限りでは典型的な多重人格かなって思いましたけど。
」
「でも・・いないんですよ。
僕が見た彼女が、この中には。
僕が最初に事件現場で見たときの彼女は・・
もっとこう・・何ていうか・・
綺麗なお姉さんって感じだったっていうか・・。
いや、つまり・・この3つの人格は全て芝居で、
僕の見たのが、その、本当の、彼女だったんじゃないかなって・・。
」
「・・・」
「・・気のせいですよね。
すみません、お邪魔しました!
」
「ちょっとちょっと・・
彼女に会わせて貰うこと・・出来ますか?
」
かなこの脳を調べる九十九。
「多重人格って言い出したのはどこのどなたでしたっけ?
」と丹原。
「いや、今でもそう思ってますよ。
」と九十九。
「じゃあ何のためにこんなことやるんですか!
精神鑑定出たんですよ!
」
「多重人格じゃないっていう可能性を消すためです。
」
かなこの病室
「自己紹介もしないで失礼しました。
脳科学者の九十九と言います。
漢数字で99と書いて九十九です。
」
「助手の由里和音です。
」
「脳科学の・・先生?
」
「はい。
あなたの脳を調べさせてもらっています。
」
「脳が、悪いんですか?
」
「いえいえ、そういうわけではないんですけども、
あなたの多重人格という治療に役立てればなーと。
」
「治療?
」
「将来的には、あなたの中の俊介、ショウコ、別の人格を
あなた一人に統合していくことになると思います。
」
「そんなこと出来るんですか?
」
「恐らく。
」九十九が微笑む。
「・・・ふざけてんじゃねーぞ!
」
かなこは突然、九十九に掴みかかり、九十九を蹴り飛ばし、
馬仱辘摔胜盲剖驻蚪gめる。
「・・俊介君ですか?
」
「今まで・・どれだけかなこに尽くしてきたのかわかってんのか!
?
あ!
?
おい!
!
」
騒ぎを聞きつけた丹原と林田が慌てて九十九からかなこを引き離す。
かなこは取り押さえられながらも九十九に怒りをぶつけ続け・・。
科警研
かなこの病室の映像を見つめる九十九たち。
「あれからずっと俊介のままですね・・。
」と林田。
「自分が消されると思って、頑張ってるんですかね。
」と和音。
「FMRIの結果はどうだったんですか?
」と丹原。
「記憶を司る海馬の機能は多少低下しているんですけど、
これは、解離性同一性人格障害者に結構多く見られるパターンなんですよね。
でも、そうじゃない場合でもこれはあり得るんですよ。
」
「それって?
」と和音。
「どちらとも判断出来ないってことなんです。
」
「他に远戏椒à悉胜い螭扦工俊?
BR>「実際にFMRI中に人格が変わってしまった場合には検査になりませんから。
それと、その、脳がこういう場合、多重人格だっていう明確なものが
今はまだ見つかってないんですよ。
」
「なんだよそれ・・。
」と丹原。
「やっぱり、僕の勘違いなんですかね。
」と林田。
船木(平泉 成)が九十九を呼びに来る。
「秋吉かなこの映像、もう一回見直してみた。
」と難波。
かなこが、監視カメラを睨みつける表情が映し出される。
「あ・・」
「お前が気付いたとおり、一瞬カメラの方を見てる。
」と難波。
「それが、どうしたんですか?
」と和音。
「あの資料映像は、初日に一連で収録したもので、
別の機会に、主人格のかなこが、カメラの位置を知ることなんか
出来んかったはずらしい!
」
「あの・・つまり・・」と林田。
「主人格であるかなこが、知るはずのない別人格の情報を知ってた
ということになる!
」
「そうか・・」と丹原。
「単なる偶然ならそれまでやけど、無視するわけにはいかん!
」
「難波さん・・どうして難波さんがそんなことを?
」と和音。
「・・・規範を覚悟に言えば、俺は精神鑑定を科学とは認めていない!
推理ごっこは大嫌いだ!
でもな、こんなもんで人を騙せるのは気に入らない。
被害者の遺族だって、納得出来んはずや。
違うか?
」
「・・・探してみます。
白膜堡耄 ?
BR>九十九はそう言い難波に微笑み・・。
かなこの病室
「・・俊介さんですか?
」九十九が声を掛ける。
「・・・何しに来た!
」
「見せたいものがあるんです。
」
九十九はかなこを病室の外に連れ出す。
「ここで結構です。
あそこにあるあの赤いドア、あの赤い扉は、隔離病棟に
繋がっています。
」
「赤・・」
「隔離病棟というのは、暴力性の高い患者さんが入れられる病棟です。
恐らくあなたがいる限り、かなこさんは一生あの扉の向こうで
過ごすことになるでしょうね。
そしてもう一方、こっちの、青いドア。
あのドアは、一般病棟に繋がっています。
」
「青・・」
「あの扉の向こうは外の自由な世界に繋がっています。
あなたが消えない限りかなこさんはあの扉の向こうへは行けません。
青い空を見ることも出来ない。
あなたが、かなこさんの為に出来ることっていうのは、
自分自身を殺すことなんじゃないでしょうか。
」
「・・・結局そういうことか。
勝手な事言ってんじゃねーぞ。
」
「え?
」
九十九を突き飛ばし、けり倒すかなこを、監視していた医師たちが
取り押さえる。
病室
かなこが目を覚ます。
「おはようございます。
今・・は、かなこさんですよね?
」と九十九。
「・・はい。
あ・・今日は、どうして・・」
「ちょっと外の空気を吸いに行きませんか?
」
「え?
」
「せっかくあんな地下室から出られたのにこんな所に閉じ込められた
ままだと嫌でしょう?
」
「・・・でも、そんなことしたら、」
「大丈夫です。
もしバレても、僕が出しましたって言いますから。
」
「ホントに!
?
」
「ホントに。
」
嬉しそうに微笑むかなこ。
「じゃあ、10分後に、一般病棟のホールで待ち合わせしましょう。
あの、廊下の突き当たりに一般病棟に繋がっている扉があります。
一般病棟ですよ。
間違えないで下さい。
誰にも見つからないように。
鍵は開けておきますから!
」
かなこは九十九の言葉に嬉しそうに微笑み・・。
病室を出たかなこは、廊下を突き進み・・。
そんなかなこを一般病棟のホールで待つ九十九と丹原。
「本当のところ先生はどっちだと思ってるんだ?
」
「まだわかりません。
だからこんな残酷な事をやっているんです。
」
「確かに、残酷だな、これは。
来るとしたら・・」
「必ず、この階段で来ます。
」
一般病棟の扉、隔離病棟の扉。
かなこは迷わず青い扉を開け・・。
「先生、本当は来て欲しくないんじゃないのか?
」
「・・・丹原さん。
」
「うん?
」
「どんなに辛い真実でも・・隠されるよりはマシなんですよね?
」
かなこの足音に辛そうに目を閉じる九十九。
「九十九さん!
!
」満面の笑みを浮かべて駆け寄るかなこ。
「九十九さん!
・・・」
「丹原さん、刑事さんです。
」
「・・俊介って人が出てきて、暴れるかもしれないから?
」
「いえいえ。
俊介さんなんて人はもう二度と出てきません。
というより最初からそんな人いなかったんでしょうね。
」
「・・・」
「なぜなら、あなたは多重人格じゃなかったからです。
」
「あの・・え?
」
「あなたがもし多重人格者だったとしたら、今ここには、
あなたいないはずなんですよ。
」
「・・どういうことですか?
」
「あなたは、先入観によってここまでたどり着いちゃったんです。
」
「先入観・・」
「はい。
僕は俊介君に、ある先入観を与えたんです。
あなたは、自分の人格、主人格に戻っても、
その先入観に囚われて行動してしまったんです。
」
「・・・」
扉の前に向かう3人。
そこには和音と林田が待っていた。
「あなたは先ほど、あの青い扉を通って、さっきのホールまで
来られたんですよね?
それは間違いないですか?
」
かなこが頷く。
「でしたら、あのプレートの文字を、読んでもらっていいですか?
どうぞ。
」
ドアに歩み寄るかなこ。
青のドアには『隔離病棟』
赤のドアには『一般病棟』
と書かれていた。
「・・・」
「一般病棟と隔離病棟のプレートを、入れ替えておいたんです。
」
「・・・」
「ですから、本当だったらあの文字通りあなたが歩いていったので
あれば、隔離病棟のホールへ行ってしまったはずなんです。
でもあなたはさっき、ちゃんと一般病棟のホールに来ましたよね。
なぜでしょう。
その文字のプレートを読まなかったからです。
なぜ読まなかったのか?
青い扉が一般病棟と繋がっているとあなたは知っていたからです。
人間の脳っていうのは、場合によって、形や、文字の意味ではなく
色で判断してしまう傾向があるんです。
青い扉は一般病棟へ繋がっていると知っていた為、
文字を読まずに、色で判断してしまったんです。
赤い扉の向こうは、閉ざされた世界。
青い扉の向こうは、自由な世界。
でもこれは、予め、わざと、俊介君だけに、
与えておいた先入観なんです。
」
「・・・」
「なのにあなたは、俊介さんしか持っていない先入観に従って
行動した。
おかしくないですか?
俊介さんが経験したことはあなたは一切覚えていないはずなんですよね?
」
「・・・」
「なぜでしょう。
答えは一つです。
あなたは、多重人格を演じていただけ、だからです。
」
かなこは震えながら九十九を見つめ・・
「・・・いつ気付いたんですか?
」
「あなたが監視カメラをチラっと見たときからです。
でも、最後まで確証はありませんでした。
あなたが・・あのホールに来るまでは。
」
九十九を見つめて頷くかなこ。
「どうして・・こんなことを・・
あなたはただ逃げ出していれば、それで・・良かったじゃないですか!
どうして・・どうして殺さなきゃいけなかったんですか?
」と林田。
「最初はそのつもりだった。
空が綺麗で・・15年ぶりに見る空は・・すごく青くて・・綺麗で・・。
こんなものを奪ったあの人たちを、やっぱり許せないと思った。
私、やっぱりどっかおかしいんですかね。
でも・・だったらうれしいな。
本当はもう、ずーっと、狂ってしまいたかったから。
」
かなこはそう言い、丹波に両腕を差し出す。
「どうぞ。
閉じ込められるのは慣れていますから。
」
その手に手錠を掛ける丹波。
かなこの表情には笑みが浮かんでいた。
九十九は悔しそうに両手を握り締めていて・・・。
病室から連行されるかなこ。
「待って、ちょっとだけ・・。
」
かなこは立ち止まり、青空を見上げると微笑み・・。
夜
「九十九さんは、秋吉かなこさんに似てますね。
」と和音。
「・・・いや僕は、容姿的にあんな不自由してませんよ。
」
「そっくりですよ!
芝居ばっかりして、人を騙して、本当の自分を隠してる。
」
「じゃ、今度は浪越さんの助手でもやりますか?
」
「なりません!
私は、脳科学をやります!
ちゃんと勉強します!
」
「・・・そうですか。
」
科警研
『精神の脳科学』という