LF11未来へ.docx
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LF11未来へ
『未来へ』
自ら命を絶った宗佑(錦戸亮)を見つめながら泣き続ける美知留(長澤まさみ)。
ふと、宗佑のカバンのポケットに差し込まれた白い封筒を見つける。
『美知留へ』と書いてある封筒を開ける美知留。
『美知留へ
さよなら 美知留。
君を自由にしてあげるよ。
生きてる限り、僕は君を縛ってしまう。
だから、君に自由を上げるには、この心臓を止めるしかない。
僕は、君のすべてになりたかった。
君の見る、世界の全てに、君を照らす、光のすべて、
君の感じる喜びの全すべてありたかったんだ。
どこまでも、いつまでも、僕は、君と一つでいたかった。
でも君は、僕のいない世界に、幸せを見つけてしまったんだね。
だから僕は行くよ。
せめてまだ、君のぬくもりが、この手に残っているうちに。
君と一つになれたことを、この体が、覚えているうちに。
ごめんね。
君の笑顔が大好きだった。
笑わせてあげられなくて。
ごめんね。
愛し方がわからなくて。
ごめんね。
僕が、君を幸せに出来なくて。
さようなら、美知留。
幸せにね。
』
手紙を読んだ美知留は、両手で宗佑の顔に触れ、泣きすがり・・
そしてバッグ一つを手に、宗佑の部屋を出ていった。
救急車のサイレンの音。
美知留は通報し、立ち去ったのですね。
ここでオープニング。
真っ白い床に白い衣装で眠る5人。
宗佑の黒いネクタイが悲しいです。
同じころ、モトクロス全日本選手権の関東大会では、
瑠可(上野樹里)が優勝を決め、
瑠可の父・修治(平田満)、母・陽子(朝加真由美)、弟・省吾(長島弘宜)、
タケルと(瑛太)エリ(水川あさみ)は、観客席で大はしゃぎ!
記者会見
週刊誌で瑠可のことが取り沙汰されたこともあって、会場には
大勢の取材陣が詰めかけていた。
「これより、全日本モトクロス選手権関東大会、
優勝記者会見を始めさせていただきます。
優勝いたしました、27番、岸本瑠可選手です。
」
廊下で待つ瑠可の肩に手を置く林田監督(田中哲司)。
瑠可は頷き、記者会見場へ。
瑠可の姿に笑顔で拍手を送るタケル、エリ、瑠可の家族。
「それでは、質問のある方は、手を挙げて下さい。
イズム編集部さん。
」
「はい。
岸本選手、本日は優勝、おめでとうございます。
」
「ありがとうございます。
」
「一つだけ!
最近週刊誌などで色々取り沙汰されて、精神的にも厳しい面が
あったと思うんですが。
その点、どうですか?
」
瑠可を心配そうに見つめるタケルたち。
「真偽の程を知りたいと思っているみなさんも多いと思うんですが。
」と記者。
瑠可は家族に視線を送る。
すると父、母が笑顔で力強く頷いてくれた。
弟の省吾も笑顔を浮かべて見つめてくれている。
三人の笑顔に勇気を貰った瑠可は・・
「モトクロスは、実力さえあれば、女子であっても、男子と同じ条件で、
同じフィールドに立って戦える、数少ないスポーツです。
私は、選手として、このレースに参加し、
優勝できたことに誇りを持っています。
陰で人になんと言われようと、詮索されようと、
この思いは揺るぎません。
今日まで私は、家族に支えられ、友人に支えられてきました。
女だからでも、男だからでもなく・・
一人の人間として、私を愛し、応援してくれました。
そのことを今日、最高に嬉しく、誇らしく思っています。
・・・他に申し上げるべきことは、何もありません。
」
瑠可は堂々とした態度でそう答えた。
記者会見後、祝賀パーティーが開かれる。
瑠可が彼女の外に出てみると、タケルとエリが待っていた。
「エリ・・。
」
エリがタケルを見つめると、タケルは笑顔で頷く。
そしてエリは瑠可に歩み寄る。
「・・・おめでとう!
かっこよかったよ、記者会見。
・・もっと早く・・言ってくれればよかったのに。
私は驚かないよ。
驚かないし、びくともしない。
だってさ、瑠可は瑠可じゃん。
」
「エリ・・」
「ごめんね・・私無神経で、気がつかなくってさ。
瑠可に変な気使わせちゃったね。
辛かったよね・・今まで・・。
」
その言葉に感情が溢れ、泣き出す瑠可。
瑠可を抱きしめ腕を擦るエリ。
「ごめんね・・」瑠可が泣き続ける。
タケルはそんな二人を優しく見つめ・・。
シェアハウス
マグカップを手に考え込む瑠可。
そこへタケルがやって来た。
「・・・美知留ちゃんどうしてるのかな。
」
「・・・」
「連絡してみようか。
」
「いいよ。
美知留は・・私のことを受け入れられなかったんだ。
だからレースに来なかった。
このまま二度と会えないとしても、それはそれでしょうがない。
」
その時、家の電話が鳴る。
「はいもしもし。
」タケルが電話に出る。
「藍田ですけど。
美知留に代わってもらっていい?
」
美知留の母・千夏(倍賞美津子)からだった。
「え?
え、そちらにいるんじゃないんですか?
」
「え?
もしかして何も聞いてないの?
」
「何もって?
」
リビングでタケルの話を聞く瑠可、エリ、友彦(山崎樹範)。
「死んでたって・・あいつが!
?
」と友彦。
「うん。
・・自殺だって。
」とタケル。
言葉を失う三人。
「・・・私、あの時酷いことを、」とエリ。
「エリさんは関係ないよ!
・・・それに、自分が悪いことに気づいたからって・・
自殺じゃ何の解決も出来ないのに。
」と友彦。
「美知留は?
」と瑠可。
「参考人として、調べられたらしい。
」とタケル。
「美知留ちゃん大丈夫かな・・。
」とエリ。
「・・・今は・・一人でいたいんじゃないのかな。
そっとしておいてあげようよ。
」と友彦。
「・・・」
ほどなく、瑠可のもとに、美知留からのハガキが届く。
そこには、
『シェアハウスの皆様へ
レースに行けなくてごめんなさい。
私は一人でやっていきます。
心配しないで下さい。
美知留』
とだけ書かれていた。
美知留の声でハガキは読まれますが、
そこでは『レースに』ではなく『レースへ』でした。
消印チェック!
『銀座 20.6.19 8-12』
これじゃ居場所が突き止められませんね。
ある日、エリが帰宅すると、友彦が引越しの準備をしていた。
「あれ?
何やってんの?
」
「あ・・エリさん・・。
」
「・・・え?
もしかして・・」
「あ・・聞いてなかった?
内示が、下ったんだ。
」
「え?
」
「来月、ミラノに、転勤だって。
」
「ミラノ!
?
でもだからって、今・・」
「その前に、家帰っていろいろ・・整理しなきゃいけないこととか、
あるから・・。
」
「・・・奥さん、どうするの?
」
「・・・」
「着いていくんだ。
」
「・・・」
「・・・そっか!
良かったじゃん!
何だかんだ言っても夫婦なんだね。
」
エリは無理に笑顔でそう言い、部屋に向かう。
「エリさん!
!
・・ごめんね。
」
「ごめんねなんて言わないで!
」
感情的に思いを吐き出したエリは、笑顔を作って振り返る。
「そのごめんねって言葉は失礼だよ。
」エリは笑顔で智彦に言う。
「・・・」
「はい。
」手を差し伸べるエリ。
「・・・」
「言ってよ。
ありがとって。
」
ためらいながらもエリと握手する智彦。
「・・・ありがとう・・。
」
その言葉印エリは笑顔で頷くと、友彦に背を向け、
悲しい表情を浮かべながら部屋に戻る。
その場に立ち尽くす友彦。
テーブルの上には、緑色のマグカップ。
食卓を囲むエリ、瑠可、タケル。
オレンジのマグカップを見つめるエリ。
「あれ?
オグリンいないね。
」とタケル。
「うん。
どこ行ったんだろうね。
」と瑠可。
「・・・出てったよ、オグリンなら。
」エリが笑顔で答える。
「何で!
?
」と瑠可。
「ミラノに転勤だって。
奥さんも一緒に。
」
「・・・」
「いいのか?
エリ。
」と瑠可。
「・・うん。
」
「しょうがないやつだな、あいつ・・。
」と瑠可。
「そんなことないよ。
いい男だったよ、私にとっては・・・うん。
」とエリ。
エリはこういう時に甘えられない人なんですね。
行かないで、って本当は言いたいのに、言えなくて、
無理に微笑んで見送ってしまう・・。
そのころ美知留は、かつて千夏と暮らしていた港町にいた。
防波堤から飛び下りようとしたその時、
「美知留ちゃーーん!
」
誰かの声に振り返る。
「美知留ちゃんじゃないの!
?
」
大きく手を振り笑顔で呼びかける女性がいた。
旅館・文治
「はい、どうぞ。
」
シズエ(大森暁美)が不恰好なおにぎりを差し出す。
「すみません、いただきます。
」
「ごめんね。
不恰好なおにぎりだけど。
」
「・・・美味しい。
」
「何年ぶりかねー。
東京に帰ったとは聞いてたけど。
」
「はい。
母は今も東京です。
」
「千夏ちゃん、元気にしてる?
」
「・・・」
「知ってるの?
あんたがここにいるってこと。
」
「・・・」
「何があったか知らないけど、ダメよ!
変なこと考えちゃ。
」
「・・・」
「さあ、入って入って。
ここね、空き部屋だから、使って。
」
「ありがとうございます。
」
「旅館でもね、丁度人探してたから、
手伝ってもらえると助かる。
何かあったら、いつでも呼んでちょうだい。
」
「ありがとうございます。
」
美知留はそこで旅館の手伝いをすることになった。
厨房
美知留はご飯の炊けた匂いに吐き気を催し・・。
病院
「おめでとうございます。
妊娠5週目です。
」
「え・・」女医の言葉に戸惑う美知留。
「これが、エコーの結果です。
ただ・・血圧が異常に高い。
高血圧合併妊娠かもしれないなー・・。
」
「あの・・それって・・」
「難しい出産になるかもしれないねー。
藍田さんの体にも、お子さんにも、リスクが・・。
」
美知留はエコー写真を見つめ・・。
眠れない夜を過ごしながら、美知留は宗佑との出会いを思い出していた。
(回想)
市役所
「藍田さん、藍田美知留さーん。
」宗佑が呼ぶ。
「あ、はい。
」
「ここに、記入漏れがあるんで、書いて下さい。
」
「はい。
」
市役所を出た美知留を宗佑が追いかける。
「藍田さん!
これ、忘れ物。
」
携帯を差し出す宗佑。
「あ!
ありがとうございます。
すみません。
」
美知留は布団から起き上がると、自分のお腹に手をあて・・。
(回想)
レストラン
「宗佑のお母さんは、どんな人だったの?
」
「優しかったよ。
恋人が、出来るまでは。
」
「恋人?
」
「僕が10歳の時、勤めてたスーパーのお客さんと、
そういう仲になって、
うちを出ていった。
それっきり、会ってない。
」
「・・ごめんね、なんか変なこと聞いちゃって・・。
」
「いいよ。
だから、僕は早く結婚して、美知留と、子どものいる、
幸せな家庭、作りたいんだよ。
」
美知留は宗佑のその言葉を考え・・・。
それから数日後、千夏が美知留のもとにやってくる。
「お母さん・・」
「シズエさんから電話を貰ったの。
」
「そう・・。
」
「おなかに子どもがいるんだって?
あの人の子?
あの亡くなった人の。
」
「・・・」後ろを向いて頷く美知留。
「やめときな。
」
「・・・一人で産んで、一人で育てるから。
」
「あのね、子どもっていうのは厄介なもんなのよ。
産んでポイって捨てるわけにもいかないし、
泣くは喚くはお金もかかるし、
生きていく上において、足手まといになるんだから!
」
「・・・お母さん、」
タバコを吸い始める千夏。
「私のことも、そう思ってたの?
」
「美知留・・・」
「私、いつも感じてたんだ。
お母さん私のこと、そういう風に思ってるんじゃないかって。
だから早く大人になりたかった!
お母さんの迷惑にならないように、早く家を出たかった!
」
「何言ってんの?
」
「私はお母さんみたいにはならないよ!
この子のことは、ありったけの愛情かけて、
大事に育てるから!
!
」
「・・・」
吐き気を催し、部屋の外の流しへと急ぐ美知留。
「おなかにいるだけでそんなに大変なのに、
なんでそんなに産みたいの?
」
美知留の背中を優しく擦る千夏。
「二人なら・・頑張れるから・・。
赤ちゃんと二人なら・・。
」
「そういえば・・お母さんも同じこと思った。
お父さんいなくなってからね、
あんたと二人なら、頑張れる・・って。
」
「・・・」
「まいっか。
勝手にしなさい。
」
千夏は美知留をそう励まし・・。
銚子市立総合病院
検診を終え、晴れやかな表情で病院を出ていく美知留。
それから数ヵ月後。
仲居の仕事を続けながらお腹の子どもと共に逞しく生きる美知留。
そしてある日、美知留は瑠可に向けて手紙を書く。
「瑠可、元気ですか?
私は一人で、なんとかやっています。
ずっと一人だったから、寂しくはありません。
(あなたの目の前から私が姿を消すのは、
これで二度目ですね。
一度は、高校のとき、母に連れられて。
そして、二度目は今度。
)
もう会えないんだね。
瑠可。
でもしょうがない。
あなたを裏切った、それが報いだと思うから。
あの頃、私は、あなたのことを何も知らなかった。
あなたの夢。
あなたの悩み。
あなたが心の中に秘めていた、思い。
(空が青いよ。
瑠可・・・
そっちの空はどう?
人が人を知るって、本当に難しい。
今も思うの。
もしも私に、人の心を知る能力があったら、
せめてそのことにもっと一生懸命だったら、
あの恐ろしい出来事を、
あの死を、防ぐことが出来たんだろうかって。
)
でもね、瑠可。
あなた達は確かに私の側にいた。
例えもう二度と会えないとしても、
私は、今もあなた達に支えられてる。
」
カッコ内は第一話モノローグにあったもの。
今回一部省略されていました。
空港
ミラノの文字を見つめてため息をつくエリ。
そんなエリの前に、花束を持った友彦が現れた。
「オグリン・・。
」
「小倉友彦!
一世一代の決断をしてまいりました!
あなたが・・・忘れられませんでした!
!
」
大きな声でそう告白する智彦に、エリは嬉しそうに微笑み・・
二人の結婚式が教会で行われる。
披露宴
「おめでとう!
綺麗だよエリ。
」と瑠可。
「ありがとう!
」
「でもびっくりしたよなー。
いきなり結婚するなんて!
やりますねオグリン!
」とタケル。
「やる時は、やるんですこれが!
」と友彦。
「あーそうですか。
」とタケル。
「えー?
」
エリと話す瑠可。
「永遠の愛なんて信じないみたいなことを、エリ言ってたよね。
オグリンで良かったの?
」
「うんー、まあね。
でも、しょうもないヤツでもさ、私の方がずーっと愛してあげれば
いっかなーって思って。
」
「そっか。
」
「何?
何の話?
」友彦が聞く。
「なーんでもない!
」とエリ。
「いやでもいい指輪ですね。
」とタケル。
「ああ、これ?
」
披露宴の帰り。
井の頭公園を歩く瑠可とタケル。
「これでシェアハウスも二人っきりかー。
」と瑠可。
「・・・そんな、つまんなさそうに言うなよー。
」とタケル。
「ていうか寂しいじゃん。
」
「・・・メンバー募集する?
」
「・・そうだな。
でもエリーみたいにサバサバした、男前の女子ってなかなかいないしなー。
」
「オグリンみたいに気持ちのいい男子もねー。
」
公園のステージを見つめる瑠可。
「ここで美知留と会ったんだよなー。
雨の夜に・・傘も差さずに・・びしょぬれで座ってた・・。
」
シェアハウス
コーヒーを飲みながら考え込む瑠可。
そんな瑠可を見つめるタケル。
瑠可がタケルの視線に気付く。
「・・・私寝るね。
」
「ああ、洗っとくよ。
」
「ありがとう。
おやすみ。
」
「おやすみ。
」
タケルは瑠可が去ったあと、あることを考え・・。
翌朝
瑠可がゴミを出しに行くと、タケルがバイクに乗って戻ってきた。
「おはよう!
」
「何だよ朝っぱらから。
」
「このバイク、林田さんから借りた。
高いから傷つけるなって。
」
「・・・」
「乗って。
瑠可、中免持ってないんだろ?
これで、美知留ちゃん迎えに行こう!
」
「・・・」
「瑠可と暮らしてるのは最高に楽しい。
けど、瑠可の心にあいた穴を見てるのは辛い。
」
「・・・」
「一緒にさ、それを埋めに行こう!
」
瑠可はタケルの笑顔に頷き・・・。
ふたりは、まず千夏の住むアパートに向かうが千夏は留守だった。
管理人が、千夏は一緒に暮らしていた男の実家、九州へ
引っ越したと教えてくれた。
「どこか、心当たりある?
美知留ちゃんが行きそうなところ。
」とタケル。
「ない。
ないけど・・・銚子かな。
」
「銚子?
」
「昔、お母さんと住んでたことがあるんだよ。
高校卒業してすぐ。
」
「よし、行ってみよう!
」
銚子に到着した瑠可たちは、美知留に関する情報を追い求める。
タクシーの運転手、漁港、外川駅、
いろいろと聞いてみるが、有力な手がかりを得ることは出来なかった。
犬若食堂
「なかなか見付からないもんだねー。
」とタケル。
「そう簡単にいくかよ。
手がかり薄いし。
・・美知留が幸せならいいんだ、私は。
新しい彼氏でも出来て、私やタケルのことなんか忘れて、
どっかで楽しくやってればさ。
」
「・・・でも違うかもしれないよ。
どっかで、一人で寂しいのを我慢して、
俺達が来るのを、待ってるのかもしれない。
」
「・・・」
夜
海岸にテントを張ったタケルは、真っ暗な海を見つめる瑠可の隣りに座る。
「なんか、案外いいな、こういうのも。
」と瑠可。
「何?
」
「タケルと、二人で旅して、美味しいもの食べて、
一緒に泊まって。
・・夫婦って、案外こういうものなのかもね。
」
「え?
」
「長年連れ添った夫婦って、男でも女でもなくなって、
結局、友達になるっていうじゃん。
」
「うん。
」
「何でも打ち明けられる親友にさ。
」
「・・・
瑠可。
」
「うん?
」
「姉がいるって話、瑠可にしたっけ。
」
「・・・」
「いるんだ。
10歳年の離れた姉が。
血は繋がってないんだけどね。
親が、再婚同士で。
父親が、俺の父親だけど、ものすごく、怒りっぽくて。
姉も、いろいろストレスが溜まってたんだと思う。
母親が、大人しい人で、父に何を言われても盾突かなくて、
姉のことを押さえつけてた。
だから姉は・・・俺を味方にしようとしたんだ。
絶対に裏切らない、小さな味方。
つまり・・・姉は俺をさ、」
「言わなくていいよ。
」
「姉を裏切れないって最初は思った。
それから・・父親と母親を、悲しませたくないって。
悪いのは、全部自分だと思い込んで、
誰にも言えずに・・・。
だから・・・女の人のからだが怖くなるんだ、そういう場になると。
」
「・・・」
「俺最低だよなー。
一生まともな恋愛なんて出来ない。
女の人を幸せにすることも。
」
「・・・出来るよ、タケルは。
タケルは、女を幸せに出来る男だよ。
それは私が一番よく知っている。
」
「・・・」涙をこらえるタケル。
瑠可はタケルに寄り添い、タケルの肩に優しく手を置く。
テントの中
お互い向き合う形でぐっすりと眠るタケルと瑠可。
瑠可の手は、タケルを優しく抱きしめている。
目を覚ました瑠可は、タケルの寝顔を微笑を浮かべて見つめる。
タケルが目を覚ます。
「おはよう。
」笑顔を浮かべるタケル。
「おはよう。
」
テントから出た二人は海に向かって思い切り伸びをし・・。
早速美知留を探すタケルと美知留。
ある店で美知留の写真を見せると、
「確か、文治旅館で働いていたんじゃないかな。
」
と有力な情報を手に入れる。
文治旅館へと急ぐ二人。
漁港を走り出すトラック。
ここから、バイクが走るシーン、美知留が旅館で働くシーン、
そしてトラックが走るシーンが続きます。
トラックとバイクが事故を起こすぞ、という前触れ。
瑠可とタケルが!
!
ふたりの乗ったバイクが見通しの悪いカーブを曲がろうとしたところ、
前方からトラックがやって来て・・
洗い物をしていた美知留は食器を落とし・・
バイクから放り出された瑠可とタケル。
「大丈夫か!
?
」トラックの運転手が声をかける。
タケルは起き上がるが、瑠可は倒れたまま。
彼女の額から血が流れている。
「瑠可!
!
瑠可!
?
大丈夫か!
?
瑠可!
!
救急車をお願いします!
救急車!
!
」
銚子市立総合病院
待合室で不安そうに待つタケル。
診察室からおでこに絆創膏をつけた瑠可が元気に出てきた。
「大丈夫!
?
」
「うん、ただの擦り傷。
」
「ああ・・。
」
「心配し過ぎだよ。
」
「だって・・」
「行こ行こ!
」
「ほんと大丈夫なの!
?
」
「うん、大丈夫。
」
「足は何て言われた?
」
「足、全然平気って言われた。
」
「全然平気なの!
?
」
二人と入れ違いに、身重の美知留が会計に向かう。
バイクにまたがるタケル。
エンジンをかけてみるが、かからない。
「あれ?
」
「何だろう。
さっきの店頭でどっか故障したのかな。
」
瑠可が修理を始める。
病院を出てきた美知留が、バスに乗り込もうとする。
「美知留ちゃん!
?
」タケルが気づく。
「え!
?
」
美知留の姿を確認する瑠可。
「美知留!
」
その声に、美知留はゆっくりと振り向き・・。
この時の「美知留!
」という瑠可の声が、
吉祥寺駅での二人の再会の時を思い出させます。
瑠可とタケルは、美知留が暮らす寮を訪れた。
美知留は自分のマグカップと、二人には湯のみ茶碗にお茶を注ぐ。
「大丈夫?
」とタケル。
「うん。
」
「ありがとう。
」と瑠可。
「旅館の厨房で、お客さんにご飯を出す手伝いをしているの。
そこの仲居さんのシズエさんって人が、
お母さんの古くからの知り合いで、
すごく良くしてくれて。
」
「そう。
」とタケル。
「子どもが出来てからも、ずっと働いて構わないって言われてるの。
そんなこと、なかなか言ってもらえないよね。
私、ここで少し、頑張ってみようと思って。
」
「・・・美知留。
東京帰ろう。
帰って、また一緒に暮らそう。
」と瑠可。
「・・・帰れないよ。
だって・・
この子は宗佑の子なんだよ。
宗佑は・・私を思って・・私のせいで死んだんだよ。
幸せになんかなれないじゃない・・。
瑠可や、タケル君のところに帰って、
慰めてもらうのは違うと思った。
だけど・・一人ぼっちで・・すごく寂しくて。
その時、お腹に赤ちゃんがいるってわかったの。
ああもう一人じゃないんだって思ったら、
涙が出るほど嬉しかった。
宗佑に・・許された気がした。
これから先も、生きてていいんだって。
」
お腹に手を当てて語る美知留。
瑠可がその手を握り締める。
「そうだよ。