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日文剧本9

『引き裂かれた絆』

直輝(山下智久)は、深夜バスで帰省する予定の莉子(北川景子)と、

出発前に会う約束をしていた。

練習を終え、莉子のもとへと急いだ直輝は、その途中で、

雨宿りをしている菜月(相武紗季)に出会った。

直輝は、持っていた傘を菜月に手渡して立ち去ろうとした。

そんな直輝に、ひとりにしないでほしい、と言って抱きつく菜月。

「行かないで・・お願い。

一人にしないで。

「・・・菜月・・どうした?

「・・・」

「俺・・用事あるんだ。

「・・そうなんだ。

ごめん。

「どうしたんだよ。

「ううん。

何でもないの。

 ・・・何でもない。

 待ち合わせ?

「うん。

・・友達と。

「・・・」

「だから・・もう行かないと。

「そうか・・。

もうホント大丈夫だから。

行って。

「風邪引くなよ。

直輝は傘とタオルを菜月に渡し、歩き出す。

立ち去る直輝の後姿を見つめる菜月。

ふと、直輝が振り返る。

菜月は寂しそうに微笑むと、直輝から借りた傘をさして歩きだす。

いつもの公園で待っていた莉子。

そこへ直輝がびしょ濡れになってやってきた。

「直輝!

「莉子!

遅れてごめん。

「傘持ってなかったの?

「俺もう部屋で待ってるかと思った。

 すげー待たせたよね。

「ううん。

「申し訳ない。

「とりあえず行こう!

莉子の住むマンション

「タオル持ってくるえん。

「つーか・・バス・・時間大丈夫?

「え?

あ、もういいの。

バス間に合わないから。

「え?

「どうしようかなと思ったんだけど、直輝に会いたかったから。

嬉しそうに微笑む直輝。

「明日電車で帰る。

親にはもう連絡した。

「ごめん。

帰れなかったんだ。

「ううん、いいの。

練習大変だった?

「あ・・ちょっと長引いちゃって。

「そっか。

「ね、何これ。

「あ!

いいのいいの!

それは!

見ないで!

「うわ!

フレンチトースト?

 作ってくれたんだ。

「いいからいいから!

食べないで。

もういいから。

1つ口に頬張る直輝。

「・・・」

「・・・」

「今度一から教えるね。

「やっぱりかぁ。

レシピ通り作ったつもりなのにな。

「嘘だよ。

美味しいよ!

ありがと。

「嘘ばっかり。

「ほんとだって。

俺腹減ってたし。

「・・・」

「食べる?

「ううん。

 本当はね、ちょっと、怖かったんだ。

 もう来てくれないんじゃないかなーと思って、ちょっと怖かった。

「行かないわけないじゃん。

 ちゃんと約束したし。

「うん。

 でも、来る途中に誰か、他に好きな人が出来たんじゃないかなぁとか。

 よくよく考えたら私のこと、そんなに好きじゃないかなって思ってたら

 どうしようかなーとか。

「思ってるわけないでしょ。

「バカみたいだよね。

莉子の頭を撫でる直輝。

「心配掛けてごめんね。

見詰め合う二人。

すると、莉子の携帯電話が鳴る。

「もしもし。

「もしもし、七海です。

 今ってもしかして、直輝と一緒?

「・・え?

「あ!

やっぱりそうだったんだ!

 友達と待ち合わせって言ってたから、莉子ちゃんかなと思って。

 直輝遅れたでしょう。

ごめんね。

 それ私のせいなの。

「・・ああ・・ううん。

「私が傘忘れて歩いてたら、追いかけてきて、傘とかタオルとか貸してくれて。

「・・・」

「やっぱり莉子ちゃんだったんだー。

 二人に迷惑掛けちゃったよね。

 でも、直輝が悪いんじゃないよ。

 私のせいなの。

「ううん。

「直輝、シーズン前の大事な時期だから、風邪引かないようにだけ

 注意してあげてくれる?

 私達も又ご飯食べようね。

 じゃあ又!

「・・うん、又ね。

「大丈夫?

仕事?

」と直輝。

「ううん。

 ・・・直輝、今日は、早く帰らないとね。

「え?

「風邪引いちゃうと良くないし。

「大丈夫だよ。

俺今超元気だもん。

「でも大事な時期だし・・

 早く、お風呂に入って、あったまった方がいいかな・・。

「・・・うん。

ありがとう。

 じゃあそうしよっかな・・。

一人になった莉子は部屋で考え込んでいた。

そこへ、麻衣(貫地谷しほり)と秀治(溝端淳平)が帰宅する。

「ただいま!

「お帰り。

「莉子実家帰ったんじゃなかったの?

「・・・」

「じゃあ莉子さんも誘えばよかったっすね!

 今日練習早めに終わったんで、外で飯食ってきたんです。

「え・・早めに終わったの?

「・・莉子、どうしたの?

「ううん。

何でもない。

直輝の家

風呂から上がった直輝は、ペットボトルの水を飲みながら考える。

「あの時・・俺の頭の中には・・

 莉子の笑顔じゃなくて、

 菜月の小さな後姿が浮かんでいた。

翌日

メディカルチェックを受ける選手たち。

ロッカールームに戻ると、直輝のロッカーの前に紙袋が置いてあった。

『この間はどうもありがとう 菜月』

洗濯されたタオルの匂いをかぎ、「懐かしい。

」と呟く直輝。

莉子は久しぶりに実家に戻る。

「莉子!

」母(手塚里美)が声を掛ける。

「お母さん!

「お帰り!

そんな中、宇都宮(永井大)は麻衣と秀治に招かれ、

すき焼きパーティーに参加。

「え!

秀治と海老名さんが付き合ってる!

」驚く宇都宮。

「ええ・・。

実は、薄々気付いていらしたかもしれないんですけど、

 私ずっと宇都宮さんに憧れていたんです。

とても。

「ああ・・」

「でも、宇都宮さんは私がいなくたって一人でも立派に生きて

 いけそうですけど。

秀治君は何ていうか・・。

 なのでこれからは、秦野秀治と共に、末永く仲良くしていただければと、

 よろしくお願いします。

「よろしくお願いします。

」と秀治。

「そっかぁ。

正直ほっとしたな。

「・・もう、こうなったら、思い切って聞いちゃいますけど、

 やっぱりその何ていうか・・本命は川崎さんで?

「え!

「え?

」「え?

「違うよ!

 よく誤解されるんだよな、それ。

「良かった~!

 ほらやっぱり違ったじゃないっすか。

」と秀治。

「・・・嬉しいけど・・なんか拍子抜け・・ですね。

「好きな女性はいるんだ。

 でも相手のいる人でさ。

 もうずーっと長い間片思いしてて、

 いい加減に諦めなきゃなと思ってたんだ。

「そうだったんですか・・。

「よし!

またいい人探さなきゃな。

そこへ、直輝たちも合流。

「なんって素晴らしい風景なの?

 憧れの、全日本選手。

 そして身長180センチ以上の美しいスポーツ系男子。

 そして、かわいい年下の彼。

 そして、こまめに良く働く青年A。

「ネギ、もう少し切った方がいいですか?

」と直輝。

「ありがとうございまーす。

冷蔵庫にはシールの台紙。

「また集めてるの、そのシール。

 もう一個もらったら上矢君に上げるんだって。

「そうですか。

 ・・あの。

「はい?

「俺川崎さん帰ってきたら、莉子のことちゃんと話そうと

 思っているんです。

 なんで、それまでは、秀治とか、他のみんなに、

 言わないでもらっていいですか?

「わかってますよ、そんなこと。

 莉子が上矢君のこと好きなら上手くいってほしいし。

 でも・・最近の莉子なんか元気ない。

 まあバイオリンのバイトのこととか色々あるんでしょうけど。

「バイオリン・・」

「・・聞いてないんですか?

バイト辞めたこと。

「いつですか?

「とにかく、莉子を不幸にするようなことがあったら

 私許しませんから。

「・・・」

心配になった直輝は莉子に電話したが、

莉子は眠ってしまっていていた。

その頃、ある音楽事務所では、莉子を叱った男性・八尾が

自分のせいで莉子が店を辞めたことを知らされていた。

「何だそれは・・。

 私はそんなつもりで言ったんじゃないんだ。

 彼女にもっとやる気を出してもらおうと思って。

「どうします?

先生。

時間がありません。

「彼女の連絡先、調べて。

「わかりました。

実家でのんびり過ごす莉子。

母親の手料理で1.5キロ太ったと母に笑う。

そんな莉子に、直輝からメールが届いていた。

『実家はどう♪?

 ゆっくり出来てる?

 俺は身体測定があったんだけど、

 体重が1.5キロ増えてた

 この調子で筋肉つけて

 当たり負けない身体になっていくといいな

 直輝』

「直輝も増えたんだ。

じゃ、まっいっか!

」莉子が笑う。

その日、直輝は宇都宮とともにアークスを代表してPBAの

開幕記者会見に出席する。

会見を終えた直輝は莉子に電話したが、またつながらなかった。

直輝からのメールを読んだ莉子が、

同じタイミングで彼に電話していたからだった。

「また留守・・。

寂しそうに呟くと、莉子はバイオリンを弾き始める。

テレビを見ていた両親は、テレビを消し、娘のバイオリンに聞き入る。

記者会見の帰り、菜月は宇都宮に誘われてケーキ屋に寄る。

「悪いね、つき合わせて。

 ここのケーキ本当に美味しいから食べてみてよ。

「・・宇都さん。

私今どんな顔しています?

「え?

「なんか、自分がどんどん嫌な女になっていく。

「どうしたの?

「私・・直輝にダメになって欲しかったんです。

「・・・」

「私と別れて落ち込んで、ボロボロになって、

 バスケも何もかも上手く行かなくなって。

 後悔してほしかった、別れた事。

「・・・」

「それで、泣いて私にすがって欲しかった。

 やっぱりお前がいないとダメだって。

 ・・・ホント、バカみたい。

 今更どうしようもないってわかっているんですけどね。

「・・・」

「でも・・気持ちが止められないんです。

 ・・・止められないの。

「・・・」

「なんとも思われないで記憶から消えるぐらいなら・・

 嫌われた方がよっぽどマシ・・。

「・・・」

CDショップでヴィヴァルディの『四季』を買った直輝は、

代々木廉(金子ノブアキ)がしおん(小松彩夏)の肩を抱いて

歩いていくことに気付く。

代々木は直輝に気付くが、悪びれた様子もない。

直輝はそのことを不審に思い・・。

莉子の携帯にメールが届く。

『買ってきた♪』

CDの写真が添付されていた。

それを見た莉子は、すぐに直輝に電話をかけた。

「もしもし。

「もしもし!

あー、やっと繋がったー!

」と莉子。

「入れ違いになっちゃってたもんね。

 元気?

「うん。

直輝の声も元気そう!

 ね、ヴィヴァルディ、買ったんだね!

「うん。

聴いてみたらさ、春とか秋のとこも、

 よく聞いたことのあるフレーズだよね。

「うん。

タタンタンタンタラタン♪」

歌いだす二人。

「でしょ?

「それそれ!

 でもね、俺は、やっぱり夏がいいなー。

強そうで。

 とくに、プレストんとこ。

第三楽章の。

「嘘!

すごいちゃんと聴いてるんだね!

「うん。

でも、プレストの意味はわかんないけどね。

「プレストは、早くっていう意味の、音楽の速度標語なの。

 急いでいる感じで、だから弾くのがすごい難しいんだ。

「へー、速さのことなんだ。

「うん。

「ふーーん。

「あ。

「うん?

「なんか今、涼しい風が入った音がした。

「ああ、もう夏も終わりだもんね。

「うん。

「・・あのさ、」「あの、」

「うん?

」「うん?

なぁに?

「いや・・何でもない。

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