机械加工安全Word格式.docx

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しかし，その程度はあきらめてもらいたい。

通常は，料理中に包丁で指先を切るより浅い傷である。

　問題となるのは，後遺症が残るような致命傷や入院するような大けが，あるいはそれ以上の事故である。

例えば，体の一部が機械に巻き込まれる事故，運転している機械や刃物に接触する事故，さらに勢いよく飛んでできた部品や工具が体に当たる事故などであり，指の切断や骨折，失明などが考えられる。

このようなけがの主原因は，集中力の欠如であろう。

そして，危険であることを知らないことは，集中力欠如の原因となる。

チャックハンドルをとばす

　旋盤やフライス盤，ボール盤では材料や工具の固定にチャックハンドルを使う。

よくありがちな事故として，チャックハンドルをつけた状態でスイッチを入れてしまい，チャックハンドルを飛ばしてしまうことがある。

勢いよく飛んできたチャックハンドルが体に当たれば，痛い思いをするだけではすまないこともある。

運転を止めたときには必ずチャックハンドルをはずしておくようにしなければならない。

回転しているチャックにバイトやテーブルをぶつける

　通常の旋盤加工で外面を削る場合，バイトをチャックの方向に送っていく。

回転しているチャックにバイトをぶつけたら，かなりのダメージがある。

けがをする可能性は低いかもしれないが，バイトや旋盤が壊れる可能性は十分にある。

最も危ないのは，自動送りをしているときに，集中力がなくなり，送りを止め忘れてしまうことである。

自動送りの際には特に気をつけたい。

　旋盤作業の初心者が意外に気をつけないのが，回転しているチャックにテーブルをぶつける事故である。

もちろん，チャックにテーブルをぶつけると旋盤へのダメージは大きい。

比較的大きい部品を削っている場合，チャックが外側にでっぱっていると，テーブルをぶつけやすいので，特に気をつけたい。

また，バイト台が右の位置にあるとテーブルをぶつけやすいので，なるべくバイト台を左側にして作業をするとよい。

回転部分に指や顔が接触する危険

　旋盤やフライス盤を動かしているとき，回転部分にわざと指や顔をぶつける人はいない。

しかし，機械加工の初心者の中には，加工面をよく見たいためか，知らず知らずのうちに顔が近づいてしまうことがある。

　特に気をつけたいのは，旋盤で比較的大きい材料を削っているときであり，チャックが回転していると，チャックがでっぱっているのが見えない。

同様に，旋盤で大きい板材を削る場合なども回転している材料が見づらくなるので気をつけなければならない。

切りくずが目に入る危険

　材料を削っていると，切りくずが飛んでくる。

切りくずが目に入ると痛いだけではすまないこともある。

原則として，切削加工をしているときは保護眼鏡を着用しなければいけない。

特に初心者のうちは切りくずが飛んで来る方向を予測できないので，常に保護眼鏡をかけるように心がけたい。

（本来であれば，保護眼鏡の着用は絶対であると言いたいが，実際には小さい部品を少しだけ削る場合など，保護眼鏡を着用しないことも多い。

）

　また，工作機械を掃除する際，コンプレッサで切りくずを吹き飛ばすことがある。

かなりの勢いで切りくずが飛んでくることがある。

このような場合こそ，油断をしないで保護眼鏡を着用したい。

同様に，ハンドグラインダなどを使用しているときもかなりの勢いで切りくずが飛んでくる。

危険である。

中ぐり加工で切りくずが飛んでくる危険

　旋盤加工において，端面加工や外面加工では切りくずが飛んでくる方向をほとんど予測できる。

通常，そのような場所に顔を向けることはない。

一方，中ぐり加工では，切りくずは回転しているチャックの中に入り，チャックの間から様々な方向に飛んでくることがある。

特に，中ぐり加工では，バイトの先端や加工面を覗きこむことが多いので気をつけたい。

旋盤でバリ取りをするときの危険

　旋盤での切削加工を終えた後，回っている材料にヤスリをかけてバリをとることがある。

このとき気をつけたいのは，ヤスリの先端をチャックに当てて，ヤスリが飛んでくることである。

実際にヤスリが顔の横をかすめていったこともある。

チャックの近くでヤスリがけをする場合は気をつけたい。

　また，本来は禁止行為かもしれないが，バリがとれているかどうか，指を当てて調べることがある。

その際，指に切り傷を負うことがある。

切りくずが回転する危険

　旋盤で柔らかい材料を削る場合，細長い切りくずが溜まり，チャックにからまることがある。

そして，切りくずが勢いよく回転し，場合によっては顔や頭に当たることもある。

顔に切り傷を負ったり，目を傷つけたりしないように気をつけたい。

かみしろ不足と材料のはずれ

　旋盤やフライス盤で加工する場合，通常，材料をチャックやバイス（万力）で固定する。

材料のかみしろが小さい場合など，固定が弱く，材料がはずれてしまうことがある。

材料が勢いよく飛んでくることはほとんどないが，万一に備えて，材料が飛んでくると思われる方向にいないことが重要である。

もちろん，加工者自身も周囲の人にも気をつける。

軍手を使用してはいけない理由

　機械加工では，軍手を使用してはいけないとよく言われる。

布製の軍手は，刃物や材料に引っかかりやすく，機械に手を巻き込まれてしまうことがあるためである。

材料が少しぐらい熱くなっても素手で作業するように習慣づけたい。

言うまでもなく，機械加工をしていて手が汚れるのは当然のことである。

ねじ切り加工と突切り加工

　旋盤加工の中でも，ねじ切り加工と突切り加工は特に集中力が必要である。

バイトが壊れやすく，また，機械操作の慣れが必要なためである。

重大な事故を起こすことはほとんどないと思われるが，工具や材料の破損を防ぐためにも，加工についての十分な知識と，機械操作や刃物の切れ味，音などに細心の注意を払いたい。

卓上グラインダの危険

　砥石を高速で回転させるグラインダは最も危険な機械の一つである。

卓上グラインダでは，砥石とプレートの隙間が大きいと指や材料が巻き込まれることがある。

指が巻き込まれたら，大けがは免れない。

また，材料を入れたら勢いよく飛び出してくるかもしれない。

適切な隙間の調整が必要である。

ハンドグラインダの危険

　ハンドグラインダも，砥石が高速回転するため，その取扱いには気をつけたい。

特に，砥石にカバーが取り付けられていないため，指を接触させやすい。

小さい材料を削る場合，材料を万力に固定するなど，手や指を砥石の近くに置かないようにしておきたい。

作業時には，革製の手袋（溶接用手袋）などを着用するとよい。

高速切断機の危険

　高速切断機も砥石を高速で回転させる。

卓上グラインダやハンドグラインダも同様であるが，高速切断機の砥石は特に薄いので，砥石に無理な力を与えて，割らないように気をつけたい。

高速回転中に砥石が割れると，破損した砥石が飛び出してくるのは言うまでもない。

フライス盤の危険

　今までの説明と同様，フライス盤を使用する場合，チャックハンドルを取り付けた状態でスイッチを入れて，チャックハンドルを飛ばしてしまったり，あるいは取り扱う刃物（主にエンドミル）で手を切ったりする危険がある。

さらに，自動送りをしていて材料やテーブルをぶつけたり，手動ハンドルの回転方向を間違えたりして，フライス盤や工具に大きなダメージを与えることもある。

フライス盤は，旋盤と比べて，かなり繊細な工作機械であるので，特に丁寧に扱いたい。

自動送りとハンドルの回転

　フライス盤のテーブルを大きく移動する場合など，材料を削っていない際に「自動送りの早送り」をすることがある。

材料を削っていないので意外と注意力が散漫になるが，そのときに勢いよく回るハンドルに指や体をぶつけることがある。

突き指や軽い打撲ですむとは思うが，かなり痛い思いをする。

手作業や工具交換時のけが

　機械加工をしていて最もけがをすることが多いのは工作機械を動かしているときではない。

やすりでバリをとったり，リーマやエンドミル，ドリルなどの工具を脱着したりしているときである。

安全な作業だと考えていて，油断しているためだろう。

バリはノコギリの刃と同じ，リーマやエンドミルの刃は包丁やカッターと同じである。

金属材料を削る工具は，人間の柔らかい皮膚ぐらい，簡単に切ることができる。

ほとんどの場合，ばんそうこうを貼る程度のけがであるが，用心するに越したことはない。

切りくず掃除の危険

　切りくずを相似する際に手を切ることはよくあることである。

特に，ステンレスの切りくずはカッターの刃のように鋭く，油断をすると深い傷を負い，かなり痛い思いをする。

油断大敵で枝ある。

帯のこ盤で指を切る危険

　帯のこ盤で材料を切り出す際，切り終わるときが最も危ない。

力を込めて材料を押しているため，材料が切り終わる瞬間，材料が前に押され，刃が飛び出てくるからである。

当然であるが，刃の手前に手を置いていてはいけない。

また，小さい材料を切り出していると，材料はかなり熱くなる。

しかし，軍手のような布製の手袋は，のこ刃に引っかかり安いので非常に危ない。

弓のこ盤の刃を折る危険

　弓のこ盤は，一度材料を設置すれば，自動的に材料を切断してくれる。

難しい操作や特別な技能はほとんどいらない。

ただし，細い材料や短い材料を切断する場合など，材料が曲がったり，動いたりすると刃が折れてしまう。

場合によっては，折れた刃が勢いよく飛んでくるかもしれない。

弓のこ盤は，普通に使っていればそれほど危ない機械ではない。

刃が折れないように気をつけていればよいだろう。

溶接と火傷

　言うまでもなく，溶接は熱い。

常識で考えて，真っ赤に溶けている鉄の中に指を入れることはないだろう。

しかし，溶接が終わった後の材料を素手で触ってしまいそうになることはあるかもしれない。

とにかく，火傷には注意したい。

溶接と目の保護

　溶接加工では目の保護が重要である。

特にアーク溶接やTIG溶接の加工部は，かなり強い光を発生する。

それを肉眼で見ると目を痛める。

専用の保護面（遮光面）を着用する必要がある。

　ガス溶接あるいはガス溶断の場合，発生する光はアーク溶接より弱いものの，溶けた材料が勢いよく飛んでくることがある。

溶接の際には目の保護に気をつけたい。

　また，TIG溶接で発生する光と熱はとにかく強い。

目の保護はもちろんであるが，少しでも皮膚が露出しているとかなり「日焼け」してしまう。

首や腕なども保護するようにしたい。

ガス溶接はなぜ危ないのか？

　アセチレンガスを扱うガス溶接は，資格を持った者しか作業してはいけない。

アセチレンガスは極めて強い爆発性があり，機器の取り扱いを間違えると，ガス爆発を起こす可能性があるからである。

したがって，正しい知識を勉強した者だけが取り扱うことができる。

クレーンの危険

　重量物を原動機の力を借りて移動させるクレーンを扱う場合も資格（クレーン運転免許）が必要である。

クレーンを扱う際，特に気をつけたいのは，ワイヤの強度とつり上げるものの重量の見積もりである。

これを間違うと重量物が落下するという重大な事故が発生する。

また，つり上げ作業中にワイヤがはずれてしまうなどの事故もありうる。

そのような事故の可能性があるので，近くでクレーン作業をしているときは，重量物の下や進行方向に入らないようにする。

ボール盤と材料の固定

　誰でも気軽に穴あけ加工をできるのがボール盤である。

操作はいたって簡単であるが，気をつけたいのは材料の固定である。

特に穴を開け終わる瞬間，材料に強い回転力がかかり，材料しっかりと抑えてないと材料が回ってしまったり，飛んでしまったりする。

電気の危険

　ほとんどの工作機械は電気を使う。

電気は目に見えないものであり，日頃使っている交流100Vの電気は人間に対して十分致死的な作用をすることを忘れてはならない。

また，感電事故の他にも，電気が発火の原因となる火災も発生しうる。

電気機器を濡れた手で操作しないこと，通路を横断する配線は極力避けること，機器が異常な挙動を示した場合，直ちにスイッチを切り，原因を調べること，不要な系統の配電盤ブレーカを全てOFFにするなど，事故を未然に防ぎたい。

安全な作業のために

　機械加工は，ある程度の知識と十分な常識を持っていれば危なくない。

上手・下手の差はあるにしても，基本的には誰でもが機械加工をできる。

しかし，著しく集中力がない人や短気な人，常識がない人は機械加工に不向きである。

そして，ありきたりではあるが，安全な服装，工作機械や工具の正しい使用方法の習得は機械加工を始める以前の常識である。