030国际杀人団の崩壊海野十三.docx

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030国际杀人団の崩壊海野十三

国際殺人団の崩壊(ほうかい)

海野十三

 作者(わたくし)は、此(こ)の一篇を公(おおやけ)にするのに、幾分の躊躇(ちゅうちょ)を感じないわけには行かないのだ。

それというのも、実(じつ)は此の一篇の本筋は作者が空想の上から捏(こ)ねあげたものではなく、作者の親しい亡友(ぼうゆう)Mが、其の死後に語ってきかせて呉(く)れたものなのである。

亡友(ぼうゆう)Mについては、いずれ此の物語を読んでゆかれるうちに諸君は、それがどのような人物で、どのような死に方をしたのであるか、おいおいとお判りになってくれることであろう。

それにしても「死後に語ってきかせたもの」などと言うのは大変可笑(おか)しいことに聞えるかも知れないが、これも事情を申して置かねばならないことであるが、諸君もかねてお聞きおよびかと思う例の心霊(しんれい)研究会で、有名なるN女史という霊媒(れいばい)を通じて、作者がその亡友から聞いた告白なのである。

その告白は、実に容易ならざる国際的怪事件を語っているので、命中率九十パーセントと称せられる霊媒(れいばい)N女史の取扱ったものだから充分事実に近いものだとすると、この怪事件は公表するには余りに重大な事柄で、或いは公表を見合わせた方が当(あた)り障(さわ)りがなくてよいかも知れないくらいなのである。

しかし一方に於(おい)て、N女史の招霊術(しょうれいじゅつ)は、単なる読心術(どくしんじゅつ)にすぎないという識者(しきしゃ)もあるようだから、それなれば、N女史の前に坐った作者の心中(しんちゅう)にかくされていた妄想(もうそう)が反映したのに過ぎないとも云えないこともないのである。

兎(と)も角(かく)、そこのところは諸君の御判断におまかせするとして、怪事件の物語をはじめようと思うが、一種の実話であるだけに、筋ばかりで、描写が充分でないのは我慢していただきたい。

  1

 古ぼけた大きな折鞄(おりかばん)を小脇にかかえて、やや俯(うつむ)き加減に、物静かな足どりをはこんでゆく紳士がある。

茶色のソフト帽子の下に強度の近眼鏡(きんがんきょう)があって、その部厚なレンズの奥にキラリと光る小さな眼の行方(ゆくえ)は、ペイブメントの上に落ちているようではあるが、そのペイブメントの上を見ているのではないことは、その上に落ちていたバナナの皮を無雑作(むぞうさ)に踏みつけたのをみていても知れる。

バナナの皮を踏んだものは、大抵(たいてい)ツルリと滑べることになっているが、この紳士もその例に洩(も)れずツルリと滑ったのであるが、尻餅(しりもち)をつく醜態(しゅうたい)も演ぜずに、まるでスケートをするかのように、鮮(あざや)かに太った身体を前方に滑(すべ)らせて、バナナの皮に一と目も呉(く)れないばかりか、バナナの皮を踏んだことにも気がつかないようにみえた。

そこで紳士は、急に進路を左に曲げて、ある大きな石の門をくぐって入った。

守衛が敬礼をすると、紳士は、別にその方を振りむいてもみないのに、鮮(あざや)かに礼を返したが、その視線は、更に路面の上から離れなかった。

軽く帽子をとったところをみると、前頂(ぜんちょう)の髪が可(か)なり、薄くなっている。

年の頃は五十四五歳にみえた。

 この紳士は、構内を物静かに歩いて行った。

それは五階建ての白い鉄筋コンクリートの真四角なビルディングが、同じ距離を距(へだ)てて、墓場のように厳粛(げんしゅく)に、そして冷たく立ち並んでいる構内であった。

紳士は、そのようなビルディングの蔭を七つ八つも通りすぎてから、これはまた何と時代錯誤(さくご)な感じのする煉瓦(れんが)建(だて)のビルディングの扉(ドア)を押して入って行った。

そこで紳士は直ぐ左手の壁にかかっている沢山の名札(なふだ)の中で一番上の列の一番端にかかっていた「研究所長鬼村(おにむら)正彦(まさひこ)」と書いた赤い文字のある札を手にとって、その裏をかえすと、又復(もと)の位置にパチリと収(おさ)めた。

赤かった文字が、今度は黒い文字に代り、矢張り「研究所長鬼村正彦」と名が読めた。

さてその老紳士鬼村所長は、この動作中にも、別に視線を動かすようなこともなく、札をかえしてしまうと、階段の下の薄暗い隅にある扉を開いて、それから長い廊下を、音のしないように歩き、一番奥まった部屋の中に姿を消した。

すべての行動が、いかにも馴(な)れ切った世界に、大したエネルギーを費(ついや)すことなしに、いとも正確にすすめられてゆくという風に見えた。

 作者(わたくし)は、たいへん詰らない鬼村博士のスナップを、意味もなくだらだらと諸君の前に拡げたようであるが、これこそは最も意味のある大切なスナップなのであることは、頁(ページ)を追ってゆくに従ってお判りになろうと思う。

とにかく、このスナップに現われたる鬼村博士の調子は、実に博士の性格の全部をものがたるものと云ってよい。

博士はこの極東科学株式会社化学研究所長として令名(れいめい)があるばかりではなく、「日本のニュートン」と世界各国から讃辞(さんじ)を呈せられるほどの大科学者で、日本科学協会々長の栄誉を担(にな)っているばかりか、英国のローヤル・ソサエティーの名誉会長であり、米国のスミゾニアン・インステチュートの名誉顧問であり、独国のテクニッシェ・ライヒサンスタルトの名誉研究員であり、1940年に東京で開かれる万国工業会議には副総裁に任ぜられることに決定している。

「日本の工業立国は鬼村博士によって完成されるであろう」といわれている。

 鬼村博士のする事には無駄がない。

その優秀な頭脳は各学会に、さまざまのすばらしい研究問題をあたえて、日本否(いな)世界の科学界を面目一新させようとしている。

博士自身も、この研究所に自(みずか)ら一分科を担任して、終日(しゅうじつ)試験管やレトルトの側(そば)をはなれない。

その研究題目は「化学による生物の人造法」というのである。

外の学者が五十年かかるところを、博士は十年で成績をあげている。

「開け、ごま[#「ごま」に傍点]の実」と廊下を飛ぶようにやって来て、博士の扉(ドア)の前に立った白い実験衣の小柄の青年学者が大きな声で叫んだ。

「どなたですか?

」と内側から博士の扉の番をするロボットがやさしい婦人の声を出して訊(き)いた。

「松(まつ)ヶ谷(や)研究員です」

 すると扉が開いた。

若い松ヶ谷学士[#「学士」は底本では「博士」、172-上段-8]は、全身に興奮を乗せて躍(おど)りこむように所長室にすべりこんだ。

「先生、今朝の新聞をごらんになりましたか」

「これから見るところじゃ」と鬼村所長は答えた。

博士は先刻(さっき)のペデストリアンと同じ姿勢をして静かに室内を歩き廻っているのであった。

帽子も外套(がいとう)もとらずに、

「何か異(かわ)ったことでもありましたかい?

「昨夜、丸の内会館で、薬物学会の幹部連中が、やられちまいました。

松瀬博士以下土浦、園田、木下、小玉(こだま)博士、それに若い学士達が四五人、みな今暁(こんぎょう)息をひきとったそうです」

「うん、松瀬君もやられたか」と博士はちょっと押黙(おしだま)って何事かを考えているようであったが、相変らず室内散歩の歩調をゆるめはしなかった。

「気の毒なことじゃのう」博士の声は水のように淡々(たんたん)として落付いていた。

「先生、昨夜の連中は毒瓦斯(ガス)にやられたそうです。

症状からみると一酸化炭素の中毒らしいですが、どうも可哀想(かわいそう)なことをしました」と松ヶ谷学士[#「学士」は底本では「博士」、172-下段-2]は下を俯(む)いた。

「薬学者連中が毒瓦斯にやられるなんて、ちょっと妙な話じゃね」博士は、毒舌(どくぜつ)を弄(ろう)するというのでもなく、これだけのことをスラスラと言ってのけた。

「ですが先生、これで四度目でございますよ。

半年とたたない間に、第一に電気学会の幹事会に爆弾を抛(ほう)りこまれて幹部一同が惨死(ざんし)をする。

次はS大学の工科教授室の連中が、悪性(あくせい)腸(ちょう)チブスでみな死ぬし、第三番目には先月、鉄道省の技術官連が大島旅行をしたときに、汽船爆沈で大半(たいはん)溺死(できし)しましたし、これで四度目です。

私はいよいよこれは唯事(ただごと)ではないと思うのですが……」

「唯事ではない――とは」博士が例の調子で呻(うめ)くように言った。

「偶然の出来ごとでは無いというのかね」

「確かに、これは何か陰謀が行われているのに違いないと思うのです。

一つ先生のお名前で学界に警告をなさってはどうですか。

でないと、この調子で行けば、遠からず、我国の科学者は全滅するかも知れません」

「全滅、ウフ、それも悪くはないだろうが、一応警告を出すことにしようか。

それにしてもこれが陰謀だとすると、どんな方面からのものだと考えているかね、君は」

「私は、こう思っています」と松ヶ谷学士は瞳を輝かして言った。

「どうやら、これは変態的な性格を持った化学者の悪戯(いたずら)だろうと思うのですが。

それは鉄道省の場合の外(ほか)は、爆弾、バクテリア、それから毒瓦斯という風に、いずれも化学者に縁(えん)のあるものばかりが、殺人手段に使われていることです。

それから犯人は学界の事情によく通じているとみえて、幹部の出席する会合ばかりを覘(ねら)っています。

先生も、どうか会合へは今後一切御出席なさらぬ様にねがいます」

「君は、犯人の心当りでもあるのかね」

「無いわけでもありませんが、申しあげません」

「僕には言えないというのかね」

「言うのを控えた方がよいでしょう。

それにまだ明瞭(めいりょう)な証拠を握ったわけでもありませんから……」

「君は椋島(むくじま)技師のことを指して言っているのじゃないだろうな」博士は、はじめて立ち止ると、帽子や外套を脱ぎながら言葉をつぎ足した。

「……」松ヶ谷学士は、椋島技師の白皙(はくせき)長身(ちょうしん)で、いつも美しいセンターから分けた頭髪を目の前に浮べた。

「椋島君なら、僕が保証をするよ。

あれはすこし妙な男ではあるが、そんな勇敢な仕事の出来るほどの人物じゃない。

うちの娘の真弓(まゆみ)のお守をしている位が精一杯じゃて」

 松ヶ谷学士[#「学士」は底本では「博士」、173-上段-23]は、複雑な感情をジッと堪(こら)えていた。

  2

 ちょうど其の時間に、椋島技師は陸軍大臣の官邸で、剣山(つるぎやま)陸軍大臣と向い合って、低声(ていせい)で密談中であった。

椋島技師は、緊張にこまかくふるえながら、普段から真白い顔色を、一層蒼白(あおじろ)くさせて、大臣の一言(ごん)一句(く)に聞き入っていた。

「事態は、想像以上に容易ならんのです」と大臣は、寝不足らしい血走った眼を大きく見開いて云った。

「彼等国際殺人団の一味徒党というのは、どの位、我国の政治界、経済界、科学界に潜行しているのか、さっぱりわからないのですが、その組織たるや、実に巧妙な方法で、一人の団員は、自分に指令を持って来る一人の人間と、自分が指命を伝達すべき二人の人間と、この三人しか知らないというのです。

兎(と)に角(かく)、最近四回に亘(わた)る科学者虐殺事件は、あきらかに、この国際殺人団が活躍をはじめたものと考えてすこしも疑う余地がありません。

これから先に、この災害が、どの位拡(ひろま)ってゆくのか考えただけでも恐ろしいことです。

彼等は、巧妙なる組織と、豊富なる情報と、莫大(ばくだい)なる資金と、しかもあくまで優秀なる頭脳と知識とを擁(よう)して立っているのですから、これは容易なことではうち破れません。

宣戦布告のない戦争です。

敵の戦線は、現に帝都の中に歴然と横たわっているのです。

 しかも敵影(てきえい)は巧(たく)みにカムフラージュされて、我々はその覘(ねら)いどころが見付からないのです。

で先刻(せんこく)申しあげたように、あなたの御尽力(ごじんりょく)を乞いたいわけです。

国家のために、敢(あ)えてあなたの御生命の提供を御願いしたい」

「だが、閣下のおっしゃることは、余りに空想すぎるのじゃありませんですか」と椋島技師は幾分苦笑を禁じ得ないという面持(おももち)で云った。

「いくら日本人が堕落(だらく)をしていたって、要路(ようろ)の高官とか、其(そ)の道の権威とか言われる連中が、そうむざむざ敵国の云うことをきくわけはないじゃありませんか」

「そういうことを今あなたと議論しようとは思いません。

それは、わが陸軍の探知し得た信用の出来る情報です。

だが、考えても御覧なさい。

×国は三十年も前から仮想敵国(かそうてきこく)として我国を睨(にら)んでいるのです。

あらゆる術策(じゅつさく)が我国に施(ほどこ)されてある中に、最も陰険(いんけん)きわまるのはこの国際殺人団の本体であるところのJPC秘密結社です。

×国は三十年前から各方面に亘って有望なる学才を有し、しかも貧乏だとか、孤児(こじ)だとか云う恵まれていない人物を探し出して、これに莫大な資金を送り、その人物が立身出世をするように極力宣伝し、遂に今日我国の要路要路の実権を彼等の手に握るようにまで後援したのです。

×国の参謀本部の命令一下、彼等×探は、いやが応でもその命令を決行しなければならないのです。

若(も)しそれに肯(がえ)んじなかったら、その男を国事犯で絞首台に送りでも、又、殺人隊をやって絶対秘密裡に暗殺してしまいでも、どうでも自由になるのです。

彼等が始めて苦しいジレンマを意識したときには、その行く道は自殺があるばかりです。

某博士の自殺、某公使の自殺、某中佐の自殺、それ等、原因のはっきりしない自殺は、皆ここに源があるのです。

これだけ申せば、国際殺人団の活躍が如何に必然的なものであり、決死的なものであるか御判りになったでしょう」

「いや、よく判りました。

それ以上は、おたずねいたしますまい。

またこの御依頼にNO(ノー)と答えたくても、即座に私の命のなくなることを思えば、YES(イエス)と申して置くのがなによりであることも判っています。

だが、私に大役(たいやく)をお委(まか)せになっても、若し私自身が、その結社の一員だったら、閣下は一体どうなさる御考えですか」

「どうも貴方は中々いたいところを御つきになりますね。

しかし御安心下さい。

その御念には及びません。

いくらでも善処すべきみちが作ってありますから」

 この場面があって、椋島技師は、国際殺人団の探索(たんさく)に当るために、剣山陸軍大臣直属のスパイを任命された。

彼はそのために、如何なる場合もこの目的のために一命を抛(なげ)うって努力すること、このスパイたることは、絶対に他人に洩(も)[#底本のルビは「もら」と誤記、175-上段-4]らしてはならぬのみか、同志であるものを発見したときと雖(いえど)も、その事情を明かし合ってはならぬこと、但(ただ)しスパイをつとめるについて、事情をあかすことがないのであれば、助手を使ってもさしつかえないことなどと、厳しい注意をこまごまとうけたのであった。

「誓って、祖国のために!

」椋島技師は、燃えるような眼眸(がんぼう)を大臣の方に向けて立ちあがると、こう叫んで、右手をつとのばした。

「天祐(てんゆう)を祈りますよ、椋島さん」大臣の幅の広いガッシリした掌(て)がギュッと、椋島技師の手を握りかえした。

  3

 椋島(むくじま)技師は大臣のさし廻してくれた幌(ほろ)深(ふか)い自動車の中に身を抛(な)げこむと、始めて晴々しい笑顔をつくった。

右手でポケットの内側をソッとおさえたのは、いましがた大臣から手渡された莫大な紙幣束(さつたば)を気にしたためであろう。

 さてそれからはじまった椋島技師の行動こそは、奇怪(きかい)至極(しごく)のものであった。

 彼は、大臣からさしまわされた自動車を、銀座街(ぎんざがい)にむけさせた。

尾張町(おわりちょう)の角を左に曲って、ややしばらく大道(だいどう)を走ると、とある横町を右に入って、それからまた狭い小路を左の方へ折れ、やがて一軒のカフェの前に車を止めさせた。

そこは、悪性(あくせい)な銀座裏のカフェの中でも、とかく噂の高いエロ・サービスで知られたバア・ローレライであった。

椋島技師は、午前十時のバアの扉(ドア)を無雑作に開くと、ツカツカと奥へ通り、そこに二階に向ってかけられた狭い急勾配(きゅうこうばい)の梯子段(はしごだん)の下に靴をぬぎとばすと、スルスルと昇って行った。

二階は真暗であった。

ムンと若い女の体臭が鼻をつく。

「キミちゃん居るかい」彼は暗中(あんちゅう)に声をかけた。

「ああ、ムーさんだわね、向うから二番目に、キミちゃん、まだ寝ているわ」と女給頭のお富が彼の膝頭(ひざがしら)の辺から頓狂(とんきょう)な声をあげた。

「そうか。

僕は二時頃まで、ちょいと寝たいんだ、あとからウンと奢(おご)ってやるから大目(おおめ)に見るんだぜ。

それからお富姐御(あねご)すまないけれど、その時間になったら、コックの留公に用が出来るんだから、どこにも行かずに待たせて置いとくれ。

もう二時まで、なんにも口をきかないからな、話しかけても駄目だぜ」

 云いたいことを云ってしまうと、彼はオーバーを脱いだり、バンドをゆるめたりして、イキナリ、おキミの寝床にもぐり込(こ)んだ。

ぼそぼそと、しばらくは小声(こごえ)で話し合っているらしかったが、やがておキミは寝床から出て行って、あとには椋島一人が、何か考え悩んでいるものか、転輾反側(てんてんはんそく)している様子だった。

こうして時計は、いく度か同じ空間を廻ってやがて午後二時を報ずるボーン、ボーンという眠そうな音が階下(した)からきこえて来た。

それがキッカケでもあるかのように、おキミがおこしに上って来た。

 椋島とおキミとコックの留吉との三人が外出の仕度をして店の方に出て来たのは、それから一時間ほど経ってのちのことである。

「まア、仮装(かそう)舞踊会(ぶようかい)へでもいらっしゃるの」

「ムーさん、勇敢な恰好ねえ」

 などと、ウェイトレス連が囃(はや)したてた。

たしかにそれは不思議な組合わせであった。

留吉はシャンとした背広に、黒い喋(ちょう)ネクタイをしめて紳士になりすましていたし、おキミはどこで借りて来たのか、三越の食堂ガールがつけているような裾(すそ)のみじかいセルの洋服をきて年齢が三つ四つも若くなっていたし、椋島は椋島で、留吉の衣裳を借りたらしく、コールテンのズボンに、スェーターを頭から被ったという失業者姿であった。

 三人は、まぶしいペイブメントのうえへ飛び出した。

三人が列をそろえて一列横隊で歩き出したところへ、横丁(よこちょう)から不意にとび出して来た若い婦人がドンと留吉にぶつかりそうになった。

「ごめん、あそばせ」と婦人は豊かな白い頬をサッと桃色に染めながら言って、チラリと一行を見たが、

「呀(あ)ッ」と小さい叫声をたてた。

この婦人は鬼村博士の一人娘の真弓子(まゆみこ)にちがいなかった。

無論彼女は、いち早く、椋島の姿をみとめたのである。

だがその異様(いよう)ないでたちの彼を何と思って眺めたであろうか、スカートの短いところでカムフラージュされるとしても、生憎(あいにく)彼にしなだれかかっていたコケットのおキミを見落(みおと)す筈(はず)はなかった。

これに対して、椋島は遂(つい)に一言も声を出さなかったし、むしろ顔をそむけたほどであった。

しかし、何(ど)うやら気になるものと見えて、真弓子の行く後を振りかえった。

彼は真弓子がこちらを振りむいたのを見て慌(あわ)てて頭を立てなおした。

  4

 其の夜の六時、電気協会ビルディングの三階第十号室には我国の科学方面に於けるさまざまな学会の会長連が、円卓(えんたく)を囲んでずらりと並んでいた。

その人数は十七名もあろうか。

電気学会長である帝大工学部長の川山博士の白頭(はくとう)や、珍らしく背広を着用に及んでいる白皙(はくせき)長身(ちょうしん)の海軍技術本部長の蓑浦(みのうら)中将や、テレヴィジョンで有名なW大学の工学部主任教授の土佐博士の丸い童顔や、それからそれへと、我国科学界の最高権威を残りなく数えることができるのであった。

勿論(もちろん)、その座長席には鬼村博士のやや薄くなった大きな頭がみえていた。

 会合は、科学協会としての例月の打合わせ会であったのであるが、議事が一ととおり済(す)んでしまうと、鬼村博士が、やおら、ずんぐりと太い身体をおこして立った。

「みなさん、例月議事は、これで終了いたしましたが、次に是非みなさんの御智恵を拝借したいことがあります。

御承知でもありましょうが、近来どうしたものか、われわれ科学者仲間におきまして、不測(ふそく)の災害に斃(たお)れるものが少くない、いや、寧(むし)ろ甚だ多いと申す方がよろしいようであります。

これにつきまして、この頃では、さまざまの臆説(おくせつ)が唱えられて居るようでありまして、中には、これは科学者に共通な悪運が廻って来たものだと申し、或る者は殺人魔の跳梁(ちょうりょう)であると申し、また或る者は偶然災害が続くものであって決して原因のあるものではないと反駁(はんばく)をいたしておるようなわけであります。

私個人の考えといたしましては、どうも気が変になった犯人のなせるわざであると考えて居るのでありまするが、それが如何なる人物であるか、探偵でもありませんのでつきとめては居りませぬが、どうも一(ひ)と筋縄(すじなわ)や二(ふた)筋縄で行かぬ人物であり、しかもその犯人は相当インテリゲンチャであると思うのであります。

それで吾人(ごじん)は充分、警戒をする必要があると考えます。

殊に今日迄の災害の後をふりかえってみますに、いずれも会合の席を覘(ねら)って居るようでありまして、今後、私共科学者の集会はなるべく控えるか、または極力秘密な場所に開き、尚(なお)これに官憲の保護を得るようにつとめたいと考えますが、かように私の御警告申上げることについてみなさんは、或いは異説をおもちかと存じ、今度は充分御対論を願いたく尚(なお)警戒法について御心付の点をお話し願いたい。

現に今夜のこの会合の如き、最も鏖殺(おうさつ)し甲斐(がい)のあるものでございますが、いままでなんともないところをみると、或いは遂になんでもないかもしれないのでありまするが、或いは又、これから爆弾が降ってくるかもしれないのでございます。

いやそれは冗談でありまして、実は私の老婆心から、本会場は既に厳重な警視庁の警戒でとりまいてございますから、どうぞ御安心をねがいます」と博士はニヤニヤと両頬に笑(え)みをうかべながら諧謔(かいぎゃく)を弄(ろう)して着座したので、最初のうちは顔色をかえた会員も、哄笑(こうしょう)に恐怖をふきとばし、一座は和(なごや)かな空気にかえった。

一旦席についた博士は衣嚢(かくし)から金時計を出してみたあとで一座の顔をみわたしたが、「どうぞ御意見を……」と言った。

そして急に立ちあがって「ちょっと便所へ……」と隣席の川山博士に耳うちをすると、席を立った。

そして入口の扉(ドア)をあけて室外に出ると、

「先生、なにも変ったことは御座いません」と、今夜の警戒の第一線に自ら進んで立っていた松ヶ谷学士が、いきなり博士に顔を合わせて、こう囁(ささや)いた。

「わしは便所へ行って来る、よろしく頼むぞ」博士は、例の調子で呻(うめ)くように言うと、そろりそろりと便所のある方へと足どりを搬(はこ)んで行った。

会合室内では蓑浦中将が立って、

「唯今、協会長の御説明のあった最近の奇怪なる事件につきまして、私の……」と、そこまで話をすすめて来たときに、どうしたものか、グローブの中の電燈が、急に二倍もの明さに輝いたかとみる間に、スーウという微(かす)かな音をたてて消えてしまった。

それだけのことであった。

別に爆発物の破裂しそうな煙硝(えんしょう)の匂いもしなかったし、イペリット瓦斯(ガス)の悪臭も感じられなかった。

座中の或る者が、

「唯

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