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奇妙な仕事

奇妙な仕事

附属病院の前のほどう鋪道を時計台へ向って歩いて行くと急に視界のひろ展ける十字路で、若い街路樹のしなやかなこずえ梢の連なりの向うに建築中の建物の鉄骨がぎしぎし空に突き立っているあたりから数知れない犬のほ吠え声が聞こえて来た。

風の向きが変わるたびに犬の声はひどく激しく盛上り、空へひしめきながらのぼって行くようだったり、遠くでしつよう執拗に反響しつづけておるようだったりした。

僕は大学への行き帰りにその鋪道をまえかが前屈みに歩きながら、十字路へ来るたびに耳を澄ました。

僕は心の隅で犬の声を期待していたが、まったく聞こえない時もあった。

どちらにしても僕はそれらの声をあげる犬の群れに深い関心を持っていたわけではなかった。

しかし、三月の終わりに、学校の掲示板でアルバイト募集の広告を見てから、それらの犬の声は濡れた布のようにしっかり僕の体にまといつき、僕の生活に入り込んできたのだ。

病院の受付では、そのアルバイト募集については全く関係していないということだった。

僕は守衛にしつこくたず訊ねて、木造の倉庫が残っていたりする、病院の裏へ入って行った。

その倉庫の一つの前で女子学生と私大生とが、中年の長靴をはいた顔色の悪い男から説明を受けていた。

僕は私大生の後ろに立っていた。

男は僕をまぶた瞼の厚い眼で見つめ、軽くうなずいて説明をくりかえした。

犬を一五〇匹殺します。

と男はいった。

専門の犬殺しが一人向うで準備していますが、明日から三日ほどで処理していただく。

病院で実験用に飼っていた一五〇匹の犬を英国人の女が残酷だということで新聞に投書し、それらの犬を飼いつづける予算も病院にはないので一度に殺してしまうことになり、その男が犬の処分を引き受けた。

皆さんも解剖のことや犬の習性についてや、いろいろ勉強にもなることですから。

男が服装や時間の注意をして病院へ入って行くと僕らは肩をならべて学校の裏門の方へ歩いた。

ペイはずいぶん良いわね、と女子学生がいった。

君は引き受けるつもり?

と驚いて私大生が訊ねた。

引き受けるわ、私は生物をやっているんだし、動物の死体には慣れてるわ。

僕も引き受ける、と私大生がいった。

僕は十字路で立ち止まり耳を澄ませたが犬の声が聞こえなかった。

街路樹の葉を落とした枝を夕暮れの風が口笛のような音をたてて渡っていた。

駈けて二人に追いつくと私大生が僕を詰問するように見つめた。

僕も引き受けるよ、と僕はいった。

翌朝、僕は草色の作業ズボンをはいて出かけていった。

犬殺しは三十歳くらいの背の低い、しかしたくま逞しい筋肉の男だった。

倉庫前に作られた囲いの中へ僕が犬を引いて行き、犬殺しが殺して皮を剥いだ死体を私大生が運び出して男に渡した。

女子学生は皮の整理をした。

仕事ははか捗どって朝のうちに十五匹を処理した。

僕はすぐ仕事に慣れた。

犬置場はコンクリートの低い塀に囲まれた広場だった。

一メートルごとに打ったくい杭の列に犬が一匹ずつ結び付けられていた。

犬はおとなしかった。

一年近くそこで飼われているうちに敵意をかきたてる習慣をなくしてしまったように、僕が塀の中へ入って行っても吠えなかった。

病院の事務員の話によると犬たちはこれという理由もなく突然吠え始め、それがすっかり静まるまでには二時間かかるが、外から塀の中へ入って行くくらいで吠えないのだそうだった。

犬たちは吠えなかったが僕が入って行くと一斉にこちらを見た。

一五〇匹の犬に一斉に見つめられるのは奇妙な感じだった。

三百のやにいろ脂色の曇りのある犬の眼に映っている三百の僕の小さいイマージュ、と僕は考えた。

それは小さい身震いを僕に感じさせた。

犬たちは極めて雑然としていた。

ほとんどあらゆる種類の犬の雑種がいた。

しかし、それらの犬は互いにひどくにかよっていた。

大型の犬や小型のあいがんよう愛玩用の犬、それにたいていは中型の赤犬が杭につながれていたが、それらは互いに似かよっていた。

どこが似ているのだろうな、と僕は思った。

全部、けちな雑種で痩せているというところか。

杭につながれて敵意をすっかりなくしているというところか。

きっとそうだろうな。

僕らだってそういうことになるかもしれないぞ。

すっかり敵意をなくして無気力につながれている、互いに似かよって、個性をなくした、あいまいな僕ら、僕ら日本の学生。

しかし僕はあまり政治的な興味を持ってはいなかった。

僕は政治を含めてほとんどあらゆることに熱中するには若すぎるか年をとりすぎていた。

僕は二十歳だった。

僕は奇妙な年齢にいたし疲れすぎてもいた。

僕は犬の群れにもすぐ興味をなくした。

しかし、スピッツとセパードの混血としか思えない不思議な犬を見つけた時は、おかしさが虫のように体中を走りまわった。

犬はセパードの頭をし、白い毛をふさふさ、暖かい風になぶられていた。

ぼくは声を上げて笑った。

こいつをごらんよ、と僕は私大生にいった。

スピッツとセパードが交尾しているかっこう恰好はひどくおかしいよ、きっと。

私大生はむっとくちびる唇をとがらせ顔をそむけた。

僕はそのあいまいな中型犬に運びひも紐をとりつけて塀から引き出した。

犬殺しが棒をさげて待っている板囲いの中へ犬を引っぱって僕は入って行く。

背にすばやく棒を隠して犬殺しはなにげなく近づいて来、僕が紐を持ったまま充分に距離を犬からあけると、さっと棒を振りおろし、犬は高くな啼いて倒れた。

それは息が詰まるほど卑劣なやりかただった。

腰のかわおび革帯から抜き取った広いほうちょう庖丁を犬の喉にさしこみ、バケツへ血を流しだしてから、あざやかな手並みで皮を剥ぎ取る犬殺しを見ながら僕は生あたたかい犬の血の臭いと特殊な感情の動揺とを感じた。

なんという卑劣さだろう。

しかし今、眼の前で犬を処理している男の機能的な卑劣さ、すばやく行動化された卑劣さは、すでに非難されるべきではないと思われる。

それは生活意識の根底で極めて場所をえている卑劣さだった。

僕はあまり激しい怒りを感じない習慣になっていた。

僕の疲れは日常的だったし、犬殺しの卑劣さに対しても怒りは膨れ上がらなかった。

怒りは育ちかけ、すぐな萎えた。

僕は友人たちの学生運動に参加することができなかった。

それは政治に興味を持たないこともあるが、結局、持続的な怒りを僕が持ちえなくなっているせいだった。

僕はそのことを時々、ひどくいらだ苛立たしい感情で思ってもみるが、怒りを回復するためにはいつも疲れすぎていた。

まっ白い皮を剥がれた、こぢんまりしてつつましい犬の死体を僕は揃えた後足を持ち上げて囲いの外へ出て行く。

犬は暖かい匂いをたて、犬の筋肉は僕の掌の中で、跳込台の上の水泳選手のそれのように勢いよく収縮した。

囲いの外で私大生が待ってい、彼は受け取った犬の死体が自分に触れないように注意しながら運んで行く。

そして僕は死んだ犬から外した運び紐をさげて新しい犬をつれ出しに行くのだ。

しかし五匹めごとに犬殺しは囲いからでて来て一服し僕は土にじかに腰を下した彼の周りを歩きながら彼と話した。

立ちどまると犬殺しの体からやはり生あたたかい犬の臭いがし、それは犬の死体そのものよりもっと生なまかったから僕は何気なく顔をそむけながら歩き回った。

女子学生は囲いの中でけがわ毛皮を整理していた。

ひどく血に汚れた皮は水洗場で洗い落とすのだ。

俺に毒を使えとすすめるやつがいるんだ、と犬殺しはいった。

毒を?

そうなんだ、俺はしかし毒は使わない。

毒で犬を殺す間、日陰でお茶を飲んでいるようなことを俺はしたくない。

犬を殺す以上は、犬の前で棒をもって立ちふさがらなくちゃ本当でないだろう。

俺は子供の時からこの棒でやって来たんだ。

犬を殺すのに毒を使うようなきたな汚いまねはできない。

そうだろうなあ、と僕はいった。

それに毒を使うとね、死んだ犬が厭な臭いを立てるんだ。

犬には良い匂いをたてて、ゆげ湯気をあげながら皮を剥がれる権力があるとは思わないか。

僕は笑った。

そうだ、その権力があるんだ、と犬殺しはまじめにいった。

俺は毒つかいどもとは訳がちがう。

俺は犬を好きだからな。

洗うための毛皮をさげて女子学生が出て来た。

彼女の厚ぼったく血色の悪い皮膚は青いままで上気していた。

血に濡れ、厚くあぶら脂のついた毛皮は重く、ごわごわしていた。

それは濡れた外套のように重かった。

僕は女子学生が水洗場へ運ぶのを手つだった。

あの男にはね、と毛皮をさげて歩きながら女子学生はいった。

伝統意識のようなものがあるわ。

棒で殺すことに誇りを持っているのね。

それが生活の意味なのよ。

あの男の文化だ、と僕はいった。

犬殺し文化ね、と感情のない声で女子学生はいった。

似たりよったりだわ。

え?

なにが。

生活の中の文化意識、と女子学生はいった。

おけや桶屋の技術が桶屋の文化だ、そういう文化が生活としっかり結びついた本当の文化だ、というようなことを評論家が書くでしょう。

あたりまえのことでね。

ところが、一つ一つ実例をあたってみるとね、そんなにきれいごとじゃないのよ。

犬殺しの文化、淫売の文化、会社重役の文化。

汚らしくて、じめじめして根強くて、似たりよったりよ。

ひどく絶望したものだな、と僕はいった。

絶望しているわけでもないのよ、と女子学生は意地悪な眼で僕を見返しながらいった。

こうして犬の毛皮を水で洗う仕事だってするしね。

かっけ脚気の新薬も飲んでいるし。

その厭らしい文化に足をつっこもうしているの?

足をつっこうむとかなんとかいうのじゃなくてね、もうみんな首までどっぷりつかっているのよ。

伝統的な文化の泥で泥まみれなのよ。

簡単に洗うことはできないわ。

僕らは水洗場のコンクリート床へ皮を投げ出した。

掌が強く臭った。

ほら、と女子学生はかが屈みこんでむく浮腫んだふくらはぎを指の腹で押して見せた。

青黒い窪みができ、それはゆっくり回復したが、もとどおりにはならなかった。

ひどいでしょ、いつこうなのよ。

たいへんだな、と眼をそむけて僕はいった。

女子学生が毛皮を洗う間、僕はコンクリートの台に腰をかけて芝生でテニスをしている看護婦たちを見た。

看護婦たちは球を打ち損じるか、体を丸くして笑うかしていた。

私はね、ペイをもらったら火山を見に行くわ、と女子学生がいった。

貯金してあるのよ。

火山を見に?

と僕は気のない返事をした。

火山はおかしいなあ、と女子学生はいい、静かな声で笑った。

彼女は疲れ切った眼をしていた。

水でりょうて両掌をひたしたまま彼女は空を見上げていた。

君はあまり笑わないね、と僕はいった。

ええ、私のような性格だと笑うことはあまりないのよ。

子供の時だって笑わなかったわ。

それで、時々、笑いかたを忘れたような気がするとね、火山のことを考えて涙を流して笑ったわ。

おお巨きい山のまん中に穴があいていてそこからむくむく煙が出ているなんて、おかしいなあ。

女子学生は肩を波うたせて笑った。

君はお金をもらったらすぐ行くの?

ええ、とんで行くわ。

山に登りながらおかしくて死にそうだと思うわ。

僕は台の上で不安定な体を支えながら寝て、空を見上げた。

雲が魚のように光り陽がまぶしかった。

陽よけにかざした掌が生ぐさく臭った。

僕の体のすみずみまで犬の臭みがしみこんでいる、と僕は思った。

犬を二十匹殺した後の僕の掌は耳をなでるためにしか犬に触れなかった僕の掌とはちがう。

僕は子犬を買おうかな、と僕はいった。

え?

雑種のとてもけちな赤犬を買うよ。

その犬はね、一五〇匹の犬のうら怨みを全身に背負うということになるんだ。

顔がゆが歪むほどひが僻んだ厭な犬になるだろうな。

僕は笑ったが女子学生は唇を硬く噛みしめていた。

私たちはとても厭らしいわ、と女子学生はいった。

僕らは倉庫の前へ帰って行った。

犬殺しと病院の事務員が話していた。

その傍で私大生が熱心に話を聞いていた。

でも、病院にはその予算がありませんよ、と事務員がいった。

私たちの病院からはもう犬は関係がなくなったんだし、飼育係は他の仕事に今日から移りました。

でも今日処理が終わることにはならないよ、と犬殺しはいった。

昨日までで、犬の飼育は終わりです。

飢えさせておくのか、と苛立って犬殺しがいった。

病院の残飯をやっていたんで、飼育係さえいたらね、飢えさせるということにならないだろうけど。

俺が餌を作るよ、と犬殺しがいった。

残飯はもらえるね。

いいですよ、残飯置場を見ますか。

今ちょっと見ておこう。

後で俺が犬に配るから。

私も手つだうわと女子学生がいった。

よせ、と激した声で私大生がいった。

犬殺しも事務員もおどろいて私大生の赤らんだ顔を見た。

よせ、そんな恥知らずなことはよせ。

え?

と当惑して犬殺しがいった。

明後日までには全部殺してしまうんだろう?

それに餌をやって手なずけるなんて卑劣で恥知らずだ。

僕はすぐに殴り殺される犬が、尾を振りながら残飯を食べることを考えるとやりきれないんだ。

今日はせいぜい五十匹しか殺さないんだ、と犬殺しが怒りを押さえた声でいった。

後の百匹を飢えさせておくのか。

そんな残酷なことはできないよ。

残酷な、と私大生は驚いていった。

残酷なだなんて。

そうだ、残酷なことを俺はしたくないんだ。

俺は犬を可愛がっている。

犬殺しは事務員と倉庫の間の暗い通路へ入って行った。

私大生はぐったりして囲いにもたれた。

彼のズボンは犬の血に汚れていた。

残酷だなんて、あいつはどうかしてるよと私大生はいった。

あいつのやり方は卑劣だな。

女子学生は冷淡に地面を見下ろして黙っていた。

地面には犬の血の濃緑色に光る汚点があった。

それは駱駝の頭の形をしていた。

え?

卑劣だとは思わないかい。

そうだろうな、と僕は投げやりにいった。

私大生はしゃが蹲みこみ眼を伏せて暗い声でいった。

僕は犬たちが低い壁に囲まれてじっとしていると考えるとやり切れないんだ。

僕たちは壁の向うを見ることができる。

あいつたちには見えない。

そしてあいつたちは殺されるのを待っているんだ。

壁の向うが見えたところでどうにもならないわ、と女子学生がいった。

そうなんだ。

そのどうにもならない、ということが僕にはやりきれない。

どうにもならない立場にいて、しかも尾を振りながら餌を食べているんだ。

僕らは私大生をもてあましていた。

僕は運び紐をぐるぐる振り回しながら次の犬を引き出しにいった。

今度は一番巨きくて耳のたれたやつにしよう、と僕は考えた。

夕暮になり五十匹の犬の処理が終わると僕らは水洗場へ体を洗いに行った。

犬殺しは洗い終わった毛皮を丁寧にそろえて縄でしばっていた。

犬の処理を病院から請け負った男もやって来た。

僕らは手や足を洗い終わって犬殺しの仕事を見守っていた。

犬の死体はどうしてるんです、と私大生が訊ねた。

あすこで、ほら、焼いているんだ、と男はいった。

僕らは死体焼却場の巨きい煙突を見上げた。

そこから淡い桃色がかった柔らかな色の煙が空へ上がっていた。

でも、あすこは人間の死体を焼くためでしょう?

と私大生がいった。

犬殺しが振りかえて鋭い眼で私大生を見つめた。

え?

犬の死体と人間の死体と、どう違うんだ。

私大生はうつむいて黙っていた。

僕は彼の肩がこきざ小刻みに震えているのを見た。

ひどくいらだ苛立っているんだな。

やはり、ちがうわね、と女子学生がえんとつ煙突を見上げたままいた。

誰も答えなかった。

少し間が抜けるほど後で、え?

と僕が言った。

煙の色が違うのよ。

ふだん人間を焼いている時より少し赤みがかって優しい色だわ。

赤ら顔の大男の死体を焼いているのかも知れないよ、と僕はいった。

犬にきまってるわ。

もっとも夕焼けのせいであんなにいい色をしているのかもしれないけど。

僕らはまた黙って煙を見上げた。

犬殺しは束にした犬の皮色を担ぎあげた。

夕焼けた空を背にして彼は黒々と逞しかった。

明日はいい仕事になりそうだな、と満足して犬殺しはいった。

え?

良い日だよ、明日は。

翌日はよく晴れたいい日だった。

犬の処理を請けおった男は来なかったが作業は順調に進行し、予定の三分の二が午前中に終わった。

僕らは疲れていたが比較的、陽気だった。

ただ、私大生だけが苛々して不機嫌だった。

彼はズボンの汚れを気にしていたし、犬の臭いが昨夜風呂に入った後もまだ(身体)中に残っていた、と不平がましく言っていた。

爪の間に犬の血がこびりついていてとれないんだ。

それに石鹸でどんなにこすっても犬の臭いがとれない。

僕は生気のない私大生の掌を見た。

細い指の先で爪は伸び汚れていた。

あなたがこの仕事を引き受けたのは失敗ね、女子学生がいった。

そんなことじゃないんだ、とますますいらだ苛立って私大生入った。

僕が引き受けなかったとしても僕の代わりにこの仕事をやる男の爪にはやはり犬の血がこびりついて離れないし、そいつの(身体)中は生々しく臭うんだ。

僕はそれがやりきれないんだ。

あなたはユマニストね、と味けない声で女子学生はいった。

私大生は血ばしった眼を伏せて黙っていた。

私大生は次第にいらだ苛立って行った。

そして犬殺しが話しかけても満足に受け答えしなかった。

犬殺しは気を悪くしていた。

僕がセッター風の雑種の犬を運び紐で引いてくると犬殺しは囲いから出て煙草を呑んでいた。

少し離れて私大生は犬殺しに頑固に背を向けて立っていた。

僕は犬を連れて散歩でもしているように犬殺しに近づいて行った。

そこへつないどきな、と犬殺しが言った。

僕は囲いの入口の杭に運び紐を結んだ。

ここの犬はどれもおとなしいな、と犬殺しは退屈した声で言った。

 こ仔うし牛ほどの大きさでひどくどうもう獰猛なのがどこでも一匹ぐらい、いるものなんだがな。

 そういう犬はやはりにくいだろうな、と僕は欠伸をかみ殺して目に涙をためながらいった。

暴れられると。

 そういうのは、とやはり欠伸をかみ殺しながら、うるんだ眼で犬殺しはいった。

おとなしくする方法があるんだ。

こんなにして。

 犬殺しはゆるめた革帯の間から関節に皮の荒々しく生えた掌を押しこもうとした。

 よしてくれ、と私大生が叫んだ。

そういう卑劣で厭らしい話は聞きたくない。

 俺はこ仔うし牛のような犬をおとなしくする方法を話しているんだぜ、と犬殺しが言った。

 私大生は唇をふる慄わせていた。

僕は君のやり方を卑劣だと言ってるんだ。

君のやり方は厭らしい。

犬だってもっと上品なあつかわれ方をされて良いんだ。

 お前さんはそんなこと言ってこ仔うし牛一匹殺せないんだろう、とやり青ざめた犬殺しが唇の周りにだえき唾液をぶつぶつふきだしていった。

 私大生は唇を噛みしめんて犬殺しを睨みつけていた。

それから急に犬殺し棒をひろいあげると囲いの杭につないだ犬に向かって走って行った。

犬は棒を振りかぶった私大生に激しく吠えた。

私大生はたじろぎ、しかし進んで行き、跳びかかってくる犬の耳の上に一擊を加えた。

犬は跳ね飛ばされ囲いに打ちつけられて悲鳴をあげたが死ななかった。

口から血をは嘔きながら苦しがっていざり歩いた。

私大生は立ちどまったまま荒いいきをして犬を見つめていた。

 おい、やっつけろ、と犬殺しが怒りをふくんだ声で叫んだ。

犬を苦しめるな。

 しかし私大生は動かなかった。

口を開き、息をあえ喘がせながら、ぶるぶる震えていた。

犬は痙攣しながらひもを張りきらせて腰を引ずり動いていた。

僕は駈けて行き、私大生の掌から棒をもぎとると、おとなしい眼をあげて血をは嘔いている犬の鼻づらをなぐりつけた。

犬は鳥のような声で吠え、倒れた。

 君はひどいことをする、と私大生が言った。

 え?

 君はひきょう卑怯だ。

あの犬は無抵抗で、弱りきっていた。

 怒りが僕の喉をつまらせた。

しかし僕は後を向き、犬の首から運び紐を外した。

僕は私大生に興味を持っていなかった。

 君は筋が良いよ、と犬殺しが近づいて来ていった。

筋が良くないと、犬殺しの仕事も危険でね。

 しかし僕はそれほどうじが良いわけではなかった。

午後おそくなってから僕は皮膚病にかか罹った中型の赤犬に腿をか咬みつかれた。

 僕がその赤犬を引いて囲いの入口まで行った時、女子学生が血に汚れた毛皮をさげてでて来た。

それを見ておびえた赤犬が暴れるのを運び紐を引き締めて静めようとした僕に赤犬は激しく跳びかかり腿に咬みついた。

囲いから出て来た犬殺しがすばやく赤犬を引き離したが腿はしび痺れたように無感覚だった。

 ひどい悲鳴をあげたわね、と女子学生がいった。

赤犬にかみまれたくらいで。

 血が靴下を濡らした。

犬殺しが殴り殺した犬の口を押しひらいて見ていった。

 ひどい歯でかんだものだな、老いぼれてぐらぐらしているよ。

汚い歯だな、ほら。

 僕は貧血した。

のろのろした動作で女子学生が僕の(身体)を支えるのを僕はぼんやりかんじていた。

私大生に見られたくなかった。

 僕は皮張りの長椅子に寝そべっていた。

看護婦が訪ねた。

 痛まないよ。

 そうだと思うわ、看護婦は立ち上がり僕を見下して行った。

歩いてみなさいよ。

 僕はズボンをずり上げ、歩いてみた。

 繃帯のせいで少し筋肉が引きつるようだな。

 いいわ。

治療費は後で注射の時、ちゃんとした計算書をあげるわね。

 え、注射だって?

 そうよ、恐水病になりたくないでしょ。

 恐水病か。

 あの予防注射はそんなに簡単じゃないんだろ。

 生きるか、死ぬかよ。

時にはね、と看護婦はそっけなく言った。

 ああ、とぼくはうめ呻いた。

なんだかひどく落ちこんでしまったな。

 何を考えているの?

 犬の歯なみのことさ、と僕は怒っていった。

 おおい、と誰かが叫んでいた。

おおい、おおい。

 僕はドアを開き、裏口の階段を下りて行った。

倉庫の前に犬殺したちが集まっていた。

そしてそのまん中に警察官は僕の名前と住所を手帳に書きこんだ。

 どうしたんです、と僕は尋ねた。

 警官は顎をしゃくって黙っていた。

 え?

 あの男は肉ブローカーだって、と女子学生が言った。

ここの犬の肉をね、肉屋へ売りこんでいたのよ。

肉屋が訴えたので、どこかへ逃げちゃったそうよ。

 僕は黙って女子学生を見つめていた。

 私たちのペイはおしまいよ。

 ああ。

 あの男が逃げたのじゃだめだわ。

 僕は犬殺しと私大生を見た。

二人とも、あいまいな白けた表情をしていた。

 でも、病院で治療を受けたりした費用はどうなるんだ。

 犬にかまれたのはあの男でも騙された肉屋でもないわ。

 警官がしっかりした声でいった。

参考に呼び出すかもしれないから。

呼び出すといっても、と私大生が不服そうにいった。

僕らが犬の肉を売ったわけじゃないでしょう。

 犬をむやみに殺すことだけでもおだやかではないんだ。

 僕らだって、何も好きころんで。

 警官は私大生を相手にしないで広場をつっきって行った。

 みんな黙っていた。

僕は傷が少しずつしつよう執拗に痛み始めるのを感じていた。

それは静かにふくれあがった。

 何匹殺したかしら、と女子学生が言った。

 七十匹。

 あと八十匹いることになるわね。

 どうしよう?

と私大生がいった。

 帰るよ、と犬殺しが不機嫌にいった。

そして犬殺しは囲いの中へ道具を取りに入った。

 僕らはほどう舗道へのアーケードへ向かって歩きはじめた。

女子学生が僕に(身体)をすりつけるようにしていった。

 え?

痛むでしょう。

 痛むさ、それに注射もしなけりゃいけないんだって。

ひどいものね。

 ああ、ひどいね、と僕は言った。

 夕焼けはじめていた。

犬の一匹が高く吠えた。

 僕らは犬を殺すつもりだったろ、とあいまいな声で僕はいった。

ところが殺されるのは僕らの方だ。

 女子学生が眉をしかめ、声だけ笑った。

僕も疲れきって笑った。

 犬は殺されてぶっ倒れ、皮をは剥がれる。

僕らは殺されても歩きまわる。

 しかし、皮が剝がれているというわけね、と女子学生はいった。

 全ての犬が吠えはじめた。

犬の声は夕暮れた空へひしめきあいながらのぼって行った。

これから二

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