LF06命がけの逃避行.docx
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LF06命がけの逃避行
『命がけの逃避行』
美知留(長澤まさみ)は、宗佑(錦戸亮)のそばにいてあげたい、
と瑠可(上野樹里)に訴える。
美知留は、自分自身も弱い人間だから宗佑の弱さがわかる、と
瑠可にいうと、宗佑のマンションへと急いだ。
瑠可は、そんな美知留の言葉に傷つき、激しく動揺し、
心配してくれたタケル(瑛太)の手を跳ね除けてしまう。
「・・・しょうがないや、もう。
帰るやつはとっとと帰ればいいんだ。
さあ飲も飲も!
」瑠可が歩き出す。
「ほっといていいの?
危なくない?
」とエリ(水川あさみ)。
「・・・好きで帰ったんだから、どうしようもないだろ。
」
電話で宗佑から、死ぬことにした、と告げられた美知留は、
震える手を押さえながらマンションの鍵を開けた。
「宗佑!
!
」
ソファーに座る宗佑に駆け寄る美知留。
すると宗佑は、何事もなかったように、
「お帰り。
」と美知留に微笑む。
「携帯出して。
」と宗佑。
「・・・」
「携帯。
」
美知留は言われたとおり携帯を差し出す。
「又新しいの買うから。
」そう言い立ち去る宗佑。
キッチンには、包丁が突き刺さったリンゴが置いてあり・・。
美知留の卒業アルバムの瑠可が載っているページが燃やされる。
「美知留。
君は、僕のものだ。
・・・二人で生きていこう。
誰にも、僕らの邪魔はさせない。
」
「・・・」
その夜、タケルやエリを誘って酒を飲みにいった瑠可は、
泥酔してしまい、タケルたちに抱きかかえられるようにして家に戻る。
「もう1軒行こうぜ!
」はしゃぐ瑠可。
「もうすぐ家だよ。
」とタケル。
「あーじゃあ家で飲もう!
タケルバーテンなんだからー。
酒出せ酒!
」
「わかったよ。
」タケルも楽しそう。
「瑠可ってさ、いつもぴしーっとしてるのに、
飲むとたまーにこうなっちゃうんだよね。
」とエリ。
「子どもみたいに?
」タケルが笑う。
「あるー日♪森の中♪」歌う瑠可。
「あれ?
何で電気ついてんの?
」とタケル。
「あ、ほんとだ。
」とエリ。
シェアハウスには、妻の元に戻ったはずの友彦(山崎樹範)の姿があった。
「・・・オグリン!
!
」
「・・・やあ、お帰り!
」
「で、結局どうするんですか?
」タケルが聞く。
「・・うん。
あの・・また、暫く、ここに置いてもらえると、
助かるんだけどね。
」と友彦。
「奥さんとは別れんの?
」と瑠可。
「あ・・あの、それは・・まだ。
」
複雑な表情を浮かべるエリ。
「ていうか・・奥さんと話し合って、暫く、試験的に別居しようって
ことになってさ・・。
」
「ずるいな!
」と瑠可。
「・・・」
「寂しいからって今エリを頼ってさ。
奥さんがおいでおいでしたら、また尻尾振って戻っちゃうんだろ?
覚悟もなしにここに住むのかよ。
エリの気持ちちょっとは考えろよ!
」友彦に掴みかかる瑠可。
「瑠可!
いいよ。
」エリが止める。
「そりゃ俺だって・・先のことは・・
自分の気持ちも含めて、・・もうほんとどうなのか・・。
」
「いいんじゃないの?
私はいいよ、別に。
いたいだけ、ここにいればいいじゃん。
」とエリ。
「エリ?
」と瑠可。
「・・・いいの?
」と友彦。
「先のことがわかんないのって、人間関係の常識じゃん。
まあ元々おぐりんとは、友達に毛が生えたようなもんだし。
いいよ、このまんまで。
まあお互い、いないよりいた方がちょっと嬉しいって感じで続いてれば。
」
「・・ありがとう。
」
「・・いいよね?
」エリが瑠可に聞く。
「エリが・・そこまで言うんだったら、私はいいけど。
」
「いやー!
ありがとう!
!
」
「それより・・心配なのは美知留ちゃんだよね。
」とタケル。
「そうだよ。
本当にいいの?
このままほっといて。
」とエリ。
「いいんだよ。
・・・いいんだ、あいつのことは。
」瑠可は悲しそうにそう呟く。
朝、歯ブラシに手を伸ばした瑠可は、美知留の歯ブラシに手を止め・・。
「美知留。
あの日の、あの再会がなければ、
私はあなたのいない人生を生きているはずだった。
あなたの恋や、悩みを知って苦しむこともなかった。
元に戻せばいいだけ。
それまでと同じ様に、ずっと一人だったと思えばいい。
簡単だよ。
だって私は、そうやって生きてきたんだから。
」
美知留の部屋の前で悲しそうに微笑む瑠可。
トランプで遊ぶ4人。
みんなにコーヒーを入れていたタケルは、美知留のマグカップを見つめ・・。
今日のエリの衣装はチャイナドレス。
「あ・・そういえばさ。
美知留ちゃん・・どうしてるんだろうね。
」と友彦。
「音沙汰ないよね。
携帯にかけてみたの?
瑠可。
」とエリ。
「いや。
」
「俺はかけてみたけど。
」とタケル。
「それで?
」とエリ。
「繋がらなかった。
もう番号も使われてない。
」
「・・・
エリ、手札、見えてるんだけど。
さっさと始めようよ。
そんなこと考えてもしょうがないじゃん。
」
そう言う瑠可を心配そうに見つめるタケル。
「瑠可、どうしてだろう。
君の気持ちが、俺にはいつも、
手に取るようにわかってしまう。
」
タケルは、美知留のことを心配して、彼女が働いていた美容室を訪れる。
が、美知留はすでに店を辞めていた。
「無断欠勤したり、急に早く帰ったりするから、
こっちも迷惑してたんですよね。
辞めてもらって助かったって感じ。
」と令奈(西原亜希)。
「そうですか・・。
」
美容室で宗佑のマンションの住所を聞いたタケルは、
思い切ってそこを訪ねた。
ドアチャイムを押しても返事はなかったが、玄関のドアには鍵が
かかっていなかった。
不審を抱き、ドアを開けるタケル。
美知留は、部屋の中に洗濯物を干していた。
眼帯をつけている。
「・・・美知留ちゃん?
」
ゆっくりと顔を上げた美知留は、タケルの姿に急に怯え出し・・。
喫茶店
怯えたように辺りを見渡す美知留。
「大丈夫だよ。
彼は勤務中だから来られない。
さっき確認したから。
」とタケル。
「・・・」
「美容室、辞めたんだね。
」
「・・・」
「携帯は?
」
美知留がカバンから携帯を取り出す。
「変えたんだ。
彼に言われて。
毎日、何してるの?
」
「ご飯・・作ったり・・洗濯したり、アイロンかけたり、
テレビ見たり・・。
2時間置きに、彼から家電に電話が入るの。
・・・あ。
もう帰らないと。
」美知留が立ち上がる。
「待って!
目・・どうしたの?
」
「・・・」
「座って。
・・ごめんね。
」
タケルが美知留の眼帯を外すと、そこには殴られた痣があった。
「・・・何でそんなことを!
」
「夕ご飯の買物の時間が掛かって、
彼が帰ってくる前に、家に帰れなかったの。
私が悪いの、うっかりしてたんだから。
」
「美知留ちゃんが選んで、彼の元に帰ったのなら
それでいいと思ってた。
・・・でもこんな生活まともじゃない!
早く抜け出さなきゃ!
」
「でも・・・これが一番いいんだと思うんだ。
これが一番・・誰にも迷惑が掛からない。
」
「そんなことはない!
絶対にそんなことはないよ!
」
「・・・」
その時、美知留の電話が鳴る。
「はい。
」
「今どこ?
」宗佑の声。
「・・・」
「何でうちにいないの?
家電に掛けたんだけど。
」
「・・・ああ・・ゴミ出すのに時間掛かっちゃって。
」
「早くうちに戻ってるんだよ。
それと、夕ご飯の買物はしなくていいよ。
僕が何か買って帰るから。
」
「・・わかった。
」
その時宗佑は家にいたのだ。
美知留の嘘に、宗佑は外に出かけていく。
「・・・美知留ちゃん。
逃げよう、ここから。
」
「・・・」
「もう充分耐えたんだ。
彼は変わらない。
わかってるよね!
」
「でも・・」
「君がいなくなって、例え彼が傷ついても、彼が悪いんだよ!
君をこんなに痛めつけた、彼が悪い!
」
「・・・」
「君は悪くない。
」
「・・・」美知留が顔を上げる。
「シェアハウスに戻ろう。
」
「・・・」
「みんな心配してる。
瑠可も・・待ってるよ。
」
タケルの温かい言葉に美知留は涙をこぼし・・。
店を出た二人。
タケルが美知留に頷くと、美知留も頷き、そして歩き出す。
横断歩道を渡っていたとき、タケルは宗佑の姿に気がつき、
慌てて美知留の手を引き走り出す。
「どうしたの!
?
」驚く美知留。
「とにかく走って!
」
宗佑が振り返る。
停まっていたタクシーに乗り込む二人。
「早く!
!
」タケルが運転手に言う。
「あ・・はい。
」
「早く出て下さい!
」
「美知留!
!
」宗佑がタクシーの窓を叩く。
「早く!
早く出して下さい!
」
タクシーを追いかける宗佑。
だがその差は広がっていき・・。
タケルのバイト先
「今日は休みだから、今夜はここに泊まって。
毛布もあるし、一晩ぐらいなら何とかなると思う。
」とタケル。
「・・・ありがとう。
」
「すぐに、シェアハウスに戻るのは、危ないからね。
」
「・・・」
「大丈夫。
ちゃんと美知留ちゃんを守る方法はあるはずだから。
」
「・・・」
「明日病院に行こう。
医者に診断書を貰って、虐待を受けたってことを証明出来れば、
彼を遠ざける、立派な理由になるから。
」
「タケル君・・」
「うん?
」
「このこと・・まだ瑠可には言わないで。
心配させたくないの。
」
「・・わかった。
」
カウンセリングを受ける瑠可
「ご家族にも話をされたことはありませんか?
」
「・・・父は、私が普通に女として結婚して、幸せになるのを
望んでいるんです。
それは言われなくてもわかります。
本当のことを言ったら、傷つくと思う・・絶対に。
」
「でもその分、あなたの中に、苦しみが溜まっていきますよね。
誰か一人でも、打ち明けられる人がいれば。
ご家族でなくても、友人でもいいんです。
本当のあなたのことを知っても、驚かず、受け止めてくれる人が
いたら、話してみるのもいいかもしれませんね。
」
シェアハウス
DVについて調べるタケル。
そこへ、家の電話が鳴る。
「はい、もしもーし。
」
「・・・」
「もしもーし。
」
「・・・」
「どなたですか?
」
電話の向こうで「ママー。
」という声が聞こえてくる。
「・・・姉さん。
」
電話をかけて来たのは優子(伊藤裕子)だった。
タケルは急いで電話を切る。
瑠可が帰って来た。
「お帰り・・」動揺を抑えようとするタケル。
「ただいま。
」
「・・コーヒー入れようか。
」
「うん・・。
」
コーヒーを入れるタケルの背中を見つめる瑠可。
「・・タケル。
」
「うん?
」
「・・やっぱいいや。
ごめん。
」
「・・・」
翌日、タケルは美知留を医者に連れていき診察してもらう。
タケルが一人でシェアハウスに戻ると、宗佑が姿を現す。
「美知留どこですか?
」
「・・・ここにはいませんよ。
」
「どこに美知留を隠した!
」
「・・・あなたは彼女に暴力を振るった。
彼女のことを監視して、家に縛り付けた。
それは全て、法律に違反する行為です。
もしこれ以上あなたが、彼女に近づいて何か強要したら、
警察呼びますよ。
」
「・・・」
「あなたの勤め先にも、訴えて出ます。
彼女を絶対に渡しません。
・・・帰って下さい。
」
宗佑が帰っていく。
タケルはDVのことをきちんと調べたんですね。
美知留を探す宗佑にも迫力がありましたが、タケルも負けていなかった!
タケルの店
眼帯をはずし、鏡を見つめる美知留。
店の準備をしながらタケルが美知留を気遣う。
「・・・タケル君。
」
「うん?
」
「私も手伝うよ。
」
「だいぶ元気になったね。
痣も・・目立たなくなったし。
」
「そう?
」
「うん。
・・・シェアハウスに戻ろうか。
」
「え・・・」
「みんなもきっと喜ぶよ。
」
シェアハウス
「ただいま。
」とタケル。
「おかえりー。
」
「・・・あのさ、みんなこっち見てほしいんだけど。
帰って来たの、俺一人じゃないんだよね。
美知留ちゃん。
」
タケルに呼ばれて美知留はリビングへ。
複雑な表情を浮かべる瑠可。
「美知留ちゃん!
」とエリ。
「帰ってきたの!
」と友彦。
瑠可は美知留を見ようとしない。
瑠可の様子を気にする美知留。
「美知留ちゃんの美容室に、住所聞いて、行ってみたんだ。
そしたら・・四六時中行動を見張られて、家から出してもらえなくて、
酷いことになってた。
もう見てられなくてさ。
ちょっと強引だったけど、連れ出してきた。
」
「全然強引じゃないよ。
当然だよ。
よくやった!
タケル。
」とエリ。
「うん!
あ・・でも、ここも危ないかも。
ほら、彼、ここの場所知ってるし。
この前みたく、美知留ちゃん連れ戻しに来るかも。
」と友彦。
「その時はみんなで、美知留ちゃん守ればいいよ!
」とタケル。
「そうだね。
美知留ちゃん一人じゃ心細いもん。
ヤツが来たら私らで撃退しちゃえばいいんだよ!
」とエリ。
「そうだな。
なんとかなるな!
」と友彦。
「・・・瑠可。
」美知留が声をかける。
「・・・」瑠可は顔を上げようとしない。
「瑠可?
いいよな?
」とタケル。
「・・・うん。
まあいいけど。
」
「ありがとう・・。
みなさん、また・・お世話になります。
」
「もう!
そんなしおらしいこと言っちゃって!
」とエリ。
「そうだよー。
せっかくだからさ、再会を祝してワイン開けようよ!
」と友彦。
「おーいいね!
この間デパ地下で買ったやつ、開けよう!
」とエリ。
「そうだね。
飲もうか!
美知留ちゃん座って。
」とタケル。
美知留が瑠可の隣に座る。
「・・・私、先寝るわ。
」瑠可が席を立つ。
「え!
?
」とエリ。
「明日早いんだ。
お先に。
」
「・・・」
部屋に戻った瑠可はとても辛そうで・・。
朝
瑠可が一番最後に起きてきた。
「おはよう・・瑠可。
」と美知留。
「おはよう。
」
「今日は・・バイトあるの?
」
「今日は、ジムで自主練。
・・・私、朝メシパス!
」
「え!
?
コーヒーだけでも飲んでったら?
」とタケル。
「行ってきます!
」
「・・私も行ってきます!
ご馳走さま。
」エリが瑠可を追う。
「瑠可!
」
「お先に。
」自転車で先に行こうとする瑠可。
「ちょっと待って!
駅まで話しながら行こう!
」
「・・・」
「ほら!
降りて!
」
「わかったよ。
」
「・・・ねー、何で怒ってるの?
」
「別に怒ってなんかないよ。
」
「優柔不断が嫌なわけ?
美知留ちゃんの。
男とくっついたり離れたりっていう。
」
「だから別に。
」
「私はわかるけどねー。
人間って、白と黒だけじゃないから。
しょうもない男でもカワイイとこあったりするし。
」
「・・・エリ、またおぐりん部屋に泊めてやってんの?
」
「まあ・・時々はね。
」
「わかんないんだよねー。
あんたのそういう緩さが。
いついなくなるかわからないのに、気許して。
あとで辛くなるのは自分じゃん?
そういうの怖くないの?
」
「私はそれ程ヤワじゃないよ。
それ程おぐりんに入れ込んでないし。
」
「そう・・。
」
「そっかー。
だから美知留ちゃんに気を許さないんだ、瑠可。
」
「え?
」
「瑠可って、ほんっと美知留ちゃんのことが好きなんだねー。
」
「・・・」
公園(5月10日土曜日11:
40)
宗佑は美知留の携帯に電話をしてみるが、着信音が鳴るだけ。
ベンチに座り、袋から菓子パンを取り出す宗佑。
公園で遊んでいた少年・樋口直也(澁谷武尊)が寄ってきた。
「お母さんまた出かけてんの?
」
宗佑の言葉に直也が頷く。
「パン食べる?
」
少年がまた頷く。
宗佑はヤキソバパンをちぎって直也に渡し、
彼が美味しそうに食べるのを笑顔で見つめる。
こういう優しさを持っている人なんですよね。
バイト中の瑠可の携帯が鳴る。
タケルからだ。
「今、森林公園の側にいるんだけど、自転車が急に壊れちゃってさ。
修理に来てくんないかな。
」
「何で?
何で私がそんなとこまで。
」
「修理屋まで持ってけないんだよ、遠くて。
来てくれたら美味しいもんご馳走するから。
」
「・・気味悪いなー。
」
工具セットを手に公園を訪れる瑠可。
「瑠可!
こっちこっち!
」
タケルは、美知留と一緒に待っていた。
「なんだこれ。
」
タケルの自転車とは別に、二人乗り用の自転車もある。
「あのさー、このブレーキがキコキコいうから、
ちょっと油差してほしいんだよねー。
」とタケル。
「ごめんね、わざわざ。
」と美知留。
「二人して何やってんだよー。
てか何だ?
この自転車。
」
「サイクリングだよ、ねー!
こんな、天気もいいし。
」とタケル。
「一応点検しましたけど。
」
工具を片づけ始める瑠可。
「あ!
あのねー、この、タイヤのすべりが、悪いような気が
すんだよねー。
あ、ちょっと、乗って、確かめてもらえないかな?
」
タケルに言われて瑠可は二人乗り用自転車に乗ってみる。
タケルはすかさず美知留に早く後ろに乗れと合図。
美知留が慌てて後ろに乗る。
「普通に動くじゃん。
」と瑠可。
「あ、ほんとだ。
よし!
出発進行!
!
」
タケルが二人の乗った自転車を押し、美知留がペダルを踏み込む。
「ちょっとちょっと!
何やってんだよ。
何だよこれ!
」
足をペダルから離す瑠可。
二人の自転車をタケルが自分の自転車で追う。
「岸本選手!
追いつかれました!
」とタケル。
「は?
」
「ぐんぐん差を開けられます!
」
「チックショー!
テメーなんかに負けてたまるかーーっ!
」
瑠可の後ろで美知留が楽しそうに笑う。
「マジで抜かすよ!
マジで抜かす!
マジで抜かすーー!
!
」
「おしりペンペン!
」
「待てよタケルーーっ!
!
」
ベンチに座ってお弁当を食べる三人。
「美味しいもんってこれかよ。
サンドイッチ!
」と瑠可。
「美味しいでしょう?
青空の下で、最高でしょう!
」とタケル。
「美味しいな、私は。
懐かしいし。
ね、学校抜け出して、よく公園でお昼食べたよね。
二人で。
」と美知留。
「そうだね。
でも・・学校嫌いだったなー。
制服も・・・全部!
」
「いつもジャージだったよね、瑠可。
」
「スカートなんか履いてられるかよ。
」
「・・・瑠可。
ごめんね。
」
「何で謝んだよ。
」
「私のこと・・見てると苛々するんでしょ?
どっちつかずで、ふらふらして。
」
「そんなことない!
そんなことないよ。
」
瑠可の言葉に美知留は嬉しそうに微笑む。
「美知留・・・知ってる?
私があなたから目をそらしてしまうのは、
いつまでも見続けていたいから。
あなたに優しく出来ないのは・・
あなたを失うのが怖いから。
この穏やかな時間がいつまでも続くといい。
出来るなら・・いつまでも。
」
帰り道
「でさ、正直どうなの?
彼と、別れられそう?
」と瑠可。
「・・・宗佑といるとね、自分がどんどん無くなっていく
感じがしたの。
いつも自分より、宗佑の気持ちを優先してきた。
そうするとね、自分が今、何を感じているのか、
何が好きで、何が嫌いか、
本当は何がしたいのか、
そういうことが、わからなくなっていくの。
そうやって、大抵のことには慣れちゃうの。
でも・・・最後まで嫌だったことがある。
」
「何?
」とタケル。
「彼が・・・瑠可のことを悪く言うこと。
」
「へー。
何て言うんだ?
」と瑠可。
「・・あんなヤツ・・女じゃないとか。
」
「・・・」
瑠可の顔色が変わる。
心配そうに瑠可を見つめていたタケルが笑い出す。
「いや・・ま、それは言われてもしょうがないよな!
ハハハ。
」
「おい、どっちの味方だよー。
」と瑠可。
「じゃーねー!
」
「ちょっと待てよー。
」
夜、塾から帰ってきた瑠可の弟・省吾(長島弘宜)が男とぶつかる。
それは・・宗佑だった。
岸本家を見つめていた宗佑は・・。
岸本家
「あら!
いらっしゃい。
」と瑠可の母・陽子(朝加真由美)。
「はい。
母の日。
いつもありがとう。
」
瑠可がカーネーションを渡す。
「あらー!
ありがとう!
」
瑠可が弟と話している時、陽子は修治(平田満)と部屋の外で話をする。
「何あれ。
」と瑠可。
「うちのポストに、変な紙が入ってたんだよ。
」と省吾。
「紙?
」
「二人とも俺に隠そうとするんだけど、俺、見ちゃったんだよね。
ポストの下にも、1枚、落ちてたから。
・・・見る?
」
「うん。
」
省吾が紙を渡す。
『あなたの娘、岸本瑠可は
女の体の中に男の心が入った
バケモノです。
男のようにいやらしい目で親しい女のことを見ている、
歪んだ精神の持ち主です。
嘘だと思うなら本人に確かめてください。
』
「・・・」
「世の中変なヤツがいるよね。
やっぱ、優勝とかすると、恨み、買うのかな。
」と省吾。
「・・・うん。
」
廊下で話す両親。
「お父さんから瑠可に聞いてみて。
」
「うん・・」
「お父さん。
」瑠可が声をかける。
「あ?
」
「いい?
」
「ああ、いいよ。
」
二人が部屋に戻る。
「なんか、変な手紙が来てたんだって?
省吾に見せてもらった。
」
「省吾お前・・」
父の言葉に慌てて部屋を逃げ出す省吾。
「・・・瑠可。
あなた・・そういうこと書かれる覚えあるの?
」
母親の、父親の複雑な表情。
「・・ああ。
女子で、抜群の記録で優勝したから、
恨まれてるんじゃないかな。
女同士の嫉妬って、すごいからさ。
」
「ああ・・」と陽子。
「そういうことか!
」と修治。
「もしかして、ちょっと本気にした?
私男っぽいからね。
」
「そんなことないよ。
」と修治。
「お母さんいつも言ってるじゃない。
あなた、普段から言葉遣い乱暴すぎるのよ。
そういうこともね、人様の恨みを買うのよ。
」
「はいはい、わかりました。
」
瑠可はそう言いながら手紙を丸めてゴミ箱に捨てると、
父の背中を見つめ・・・。
ため息をつきながら家に帰る瑠可。
シェアハウス
ドアの音に驚いて振り返る美知留。
「あ・・お帰り!
」
「ただいま!
」と瑠可。
「コーヒー入れよっか。
あ!
DVD一緒に見ない?
今日、駅前で借りてきたんだ。
会員登録して。
」
「・・・ごめん。
今日は、疲れてるんだ。
」
「あ・・そう。
」
「おやすみ!
」
瑠可は部屋に行ってしまう。
リビングで一人ぼっちの美知留。
そして、自分の部屋で一人ぼっちの瑠可。
同じ屋根の下に住んでいても、遠い存在の二人・・。
「ただいまー。
」タケルが帰って来た。
「・・・」
「美知留ちゃん?
」
美知留が涙を拭う。
「ごめんね。
お茶・・でも入れようか。
コーヒーがいい?
」
「・・・どうしたの?
」
「・・・わからない。
自分でも・・よくわからないの。
ただ・・なんとなく寂しくて・・。
私・・・やっぱりここにいない方がいいんじゃないのかな。
」
「何で?
」
「瑠可に・・許されてないような気がする。
」
部屋から出てきた瑠可は二人の話声に気づく。
「そんなこ